研究課題/領域番号 |
18K19204
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
仲井 まどか 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60302907)
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研究分担者 |
斉藤 美佳子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20291346)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | チャノコカクモンハマキ / 卵 / インジェクション / 孵化率 |
研究実績の概要 |
チャノコカクモンハマキ卵にウイルスDNAを打ち込む方法を検討した。ガラスキャピラリーを用いて卵塊のままフェノールレッド水溶液を打ち込み孵化率を観察した。チャノコカクモンハマキの卵塊は、50個から100個の卵により構成されている。しかし、卵塊の状態のまま溶液を注射すると、卵塊中のどの卵に注射されているのか判断できない。つまり、注射した卵数あたりの注射後に健全に孵化した卵数をもって注射成功率とするため、この注射成功率を調べるためには、注射していない卵と注射している卵を区別して卵数を把握する必要がある。まず、注射していない卵を殺す方法など試行錯誤したが、結果的に卵塊のまま注射することが難しいという結論に達した。また、注射接種などの操作を行う過程で、卵塊にカビが生えてしまい、これが孵化率の低下をもたらすことがわかった。カビを防ぐために、防腐剤の添加を検討し、チャノコカクモン卵の孵化に影響しない防腐剤の添加方法を確立した。最後に、チャノコカクモンハマキの卵塊を薬剤処理によりバラバラにする方法を検討し、さらに、バラバラになった卵をカビの発生を防ぎながらスライドグラスに固定する方法を検討した。その結果、チャノコカクモンハマキの卵塊をバラバラにすることに成功し、さらにカビの発生を防ぎつつスライドグラスに固定する方法を確立することができた。ガラスキャピラリーによる注射圧におおむね耐えられるよう固定するには技術的な習熟が必要であるが、おおむね操作に耐えらえる方法を確立することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロマミュピュレータを用いた昆虫卵への注射接種法は、トレーニングの有無や手先の器用さなどにより成功率が変わってくる。今年度は、比較的簡便なカイコ卵への注射設備を用いて検討を行った。卵塊のまま注射する方法や途中でカビが生えてしまう問題などについて検討を重ねたが、最終的にはこれまで全く報告のない方法で、卵塊をバラバラにしてスライドグラスに固定する方法を開発することに成功した。この方法を用いても、注射機の角度や卵の固定の状態などにより、注射成功率が変動する可能性があるが、これは注射接種を繰り返して習熟することにより、ある程度克服することができると考えられる。そのためおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、野生株のチャノコカクモンハマキ核多角体病ウイルスDNAを抽出してチャノコカクモンハマキ卵に注射し、ウイルス感染の成否を判断する。まずこの方法でウイルスが感染しなければ組換えウイルスを接種しても感染しないため、野生株ウイルスの接種を行い方法を検討する。野生株ウイルスDNAの接種によりウイルス感染が認められなかった場合には、接種濃度を上げたり、核酸導入剤を添加するなどの方法で改善を試みる。野生株ウイルスが感染した場合には、bacmid法を用いて組換えウイルスDNAを調整し、野生株ウイルスDNAの注射と同じ方法で組換えウイルスDNAを昆虫卵に接種して組換えウイルスを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、チャノコカクモン卵への注射接種方法を検討し、最終的には注射接種する新しい方法を概ね確立することができたが、ウイルスDNAの接種は、翌年度に行うことになった。翌年度は、ウイルスDNAの抽出や組換えDNAを構築するキットの購入が必要になるため、その購入費を翌年度に使用する計画にした。
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