研究課題/領域番号 |
18K19205
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
鈴木 栄 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (80397017)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 遺伝子組み換え作物 / GM作物 / 拡散防止 / メチル化 / 脱メチル化 / RNAi / カロテノイド / エピゲノム編集 |
研究実績の概要 |
本研究では,一定栽培期間を経過した後に,自発的に枯死するシステムを遺伝子組み換え(GM)作物に導入し,GM作物の意図しない拡散と生態系への影響を防止する新技術の開発を目的とした. 1.35Sプロモーター領域のDNAメチル化の誘導および形質転換体の作出:致死性形質(NtPDS-RNAi構造)を制御する35Sプロモーター領域を標的(ターゲット)として,部分配列のRNAi構造を作成(サイレンサー)した.このRNAi構造を全身高発現性のミヤコグサ由来ポリユビキチン遺伝子プロモーター(LjUbip)で制御した外来性RNAiベクター(サイレンサーベクター)を作成した.ターゲットおよびサイレンサーの両遺伝子をタバコに導入し,ターゲットのメチル化による致死性形質の抑制が誘導されたと予想される,葉が緑色の形質転換体を複数個体作出した.各形質転換体(T0)におけるサイレンサーの導入コピー数を調査し,1コピーの系統を選抜した.この選抜により,T0世代と非形質転換体との交配で得られるT1世代において,サイレンサーが排除されメチル化されたターゲットのみを持つ系統が得られる.結果として,T1世代では,葉が緑色の系統(メチル化維持)と白い斑入りの系統(部分的な脱メチル化進行)が得られた. 2.メチル化・脱メチル化解析および致死性形質の発現抑制の「解除」の確認:バイサルファイトシークエンス解析およびメチル化感受性制限酵素による,メチル化解析を行った.その結果,T0およびT1世代の緑色葉は,35Sプロモーターのターゲット配列がほとんどメチル化されていた(平均90%以上).したがって,サイレンサーが排除されたT1世代でもターゲット配列のメチル化が維持され,葉が緑色のままであることがわかった.また,T1世代の白い斑入りの系統では,ターゲット配列のメチル化率が30~50%であり,脱メチル化が進行してることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
35Sプロモーター領域を標的としたメチル化の誘導と解除は,T0およびT1世代において,ほぼ予想通りの結果が得られた.また,35Sプロモーターで制御したアントシアニン生合成関連遺伝子(Atpap1)を,致死性形質(NtPDS-RNAi)と仮定した実験も同様に行った(メチル化が進行すると葉が赤色から緑色になる).その結果,T0とT1世代の緑色葉において,35Sプロモーターのターゲット配列がほとんどメチル化されており,NtPDS-RNAiと同様の結果となった.
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今後の研究の推進方策 |
緑色組織特異的なアサガオ由来PnZIPプロモーターを用いたNtPDS-RNAi構造の制御は,現在進行中である.35Sプロモーターと同様に,PnZIPプロモーターでもメチル化の維持と解除が確認されれば,緑色組織以外の成熟した果実などにも本システムを適用できる可能性がある.
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