研究課題/領域番号 |
18K19209
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
竹本 愛子 (田中愛子) 名古屋大学, 生命農学研究科, 学振特別研究員(RPD) (90464148)
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研究分担者 |
田中 伸和 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 教授 (50263744)
大谷 基泰 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (20223860)
中谷内 修 石川県立大学, 生物資源環境学部, 助教 (40227963)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 共生 / 微生物相 |
研究実績の概要 |
本研究では、サツマイモ(Ipomoea batatas)とその微生物相との共進化に着目し、サツマイモが貧栄養な環境であっても高い生産性を維持するメカニズムの解明を目指す。最近、サツマイモ栽培種ゲノムにアグロバクテリウム由来のT-DNAが保存されていることが報告された。そのT-DNA領域に保存されるアグロバクテリウム由来のAcs遺伝子は、アグロシノピン合成酵素である。本来、Acs遺伝子はアグロバクテリウムが宿主植物に感染する際、T-DNAの一部として宿主ゲノムに組込まれる遺伝子であり、アグロバクテリウムは自身が独占して分解・消費できる栄養源としてアグロシノピンを宿主細胞に生産させる。 1. 本年度は、サツマイモのAcs遺伝子(IbAcs)によって生産される物質がアグロシノピンであるかどうかを検証するため、IbAcs高発現タバコを作出した。IbAcs高発現タバコ葉抽出液およびトマト癌腫抽出液を用いて、ろ紙電気泳動を行い、還元糖を分画・検出した。その結果、IbAcs高発現タバコ葉抽出液にトマト癌腫抽出液と一致する位置にある種の還元糖が存在することが明らかとなった。また、複数のサツマイモ品種の塊根抽出液からも同じ位置に還元糖の存在を示すスポットが検出された。さらにこの物質を粗抽出し、Orbirtap LC-MSを用いた質量分析の結果、この物質の質量はアグロシノピンAと一致した。 また、IbAcs遺伝子のサツマイモにおける機能を明らかにするため、ノックダウンベクターおよびCRISPR/CAS9ベクターを作成し、サツマイモ品種花らんまんの形質転換体作出を進めている。現在、再分化した幼個体が得られているが、次年度はIbAcs遺伝子発現抑制個体およびIbAcs遺伝子変異個体を選抜後、塊根を形成させ、野生型個体との比較による微生物相の解析を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、アグロシノピンの検出・同定をほぼ計画通り進められている。サツマイモのAcs遺伝子ノックダウン個体の作出に関しては当初予定していた品種White Starが培養変異を起こしたために品種の変更を余儀なくされたが新たな品種花らんまんに切り替えて実験を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
IbAcs遺伝子を導入したタバコにおいて検出された物質はアグロシノピンAと推定される。今後はこの物質がアグロシノピンAであることを確定するためNMR解析を実施する。また、サツマイモのIbAcs遺伝子発現抑制個体を用いて塊根における共生微生物相の解析を予定している。さらに、IbAcs遺伝子を導入したタバコ個体を用いて根圏微生物相の解析も計画している。
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