コムギ受精卵への物質導入系確立のため、イネ卵細胞・受精卵の系を一部改変したPEG-Ca2+法の検討を行った。コムギ受精卵でPEG-Ca2+処理を行うと、細胞内容物を吐出して発生が停止してしまう割合が多い。そこで受精卵に与えられる物理的ストレスを軽減するためにMMG 溶液にアガロースを加えてPEG-Ca2+処理を行った。また、より高濃度(500 ng/μl)のプラスミド溶液の利用を検討した。これらの改変によって、2細胞以降へ発生が進むコムギ受精卵の割合を高めることができたが、物質導入の指標となるGFP蛍光は観察されなかった。次に、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤の1つSAHA (Suberoylanilide hydroxamic acid) がコムギ卵細胞の自律的発生を誘導するか否かを検討した。その結果、遠縁交雑による半数体作出法に加え、当該阻害剤によるコムギ卵細胞の部分的自律的分裂誘導効果が確認された。
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