研究課題
植物のPAMP誘導免疫システムはこれまではPAMP受容後のシグナリングおよび活性化する免疫反応に関しては、共通性が非常に高いと捉えられてきたが、最近になり、その相違性が徐々に見出されているが、詳細は不明である。シロイヌナズナnsl1変異体は、PAMPであるflg22ペプチドに処理によって自発的細胞死に基づく壊死斑を形成し、さらに、nlp24ペプチドではflg22の10分の1の濃度でも壊死斑形成が起き、PAMPによって活性化する免疫応答の相違が本変異体では壊死斑形成という形で可視化できる。本研究ではflg22とnlp24が活性化するPAMP誘導免疫システムの相違性に焦点を当てた。まずnsl1変異体の壊死斑形成サプレッサー変異体のスクリーニングにおいては、24のサプレッサー変異体を同定し、このうちの1変異体の原因遺伝子EIN2がnlp24によるPAMP誘導細胞死に関与することを明らかにした。さらにEIN2は、トリプトファン由来の抗菌物質の合成の制御に関わることを見出し、nlp24とflg22が誘導する植物免疫反応では、EIN2依存的な抗菌物質の合成に相違があることが推察された。次にflg22と比較してnlp24によって、ERF1遺伝子の発現がより強く誘導されることを見出し、このERF1の発現を指標にした変異体スクリーニングをおこなった。具体的にはERF1プロモーターにルシフェラーゼ遺伝子を連結し導入した形質転換シロイヌナズナに由来する約30,000個体の変異集団に対して、ハイスループット型リアルタイム発光測定装置を用いたスクリーニングを実施した結果、nlp24処理に対する発光値が減少しているにも関わらずflg22処理に対して変化が見られないnlp24免疫経路に特異的な欠損を有する変異体8個体、ERF1の発現パターンに異常が生じている変異体8個体、計16変異体の発見に成功した。
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New Phytologist
巻: 225 ページ: 400~412
10.1111/nph.16118