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2019 年度 実施状況報告書

光遺伝学を利用して昆虫後胚期形態形成機構を理解する

研究課題

研究課題/領域番号 18K19213
研究機関京都大学

研究代表者

大出 高弘  京都大学, 農学研究科, 助教 (60742111)

研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2021-03-31
キーワード光遺伝学 / 後胚発生 / 遺伝子組換え / 昆虫
研究実績の概要

不完全変態昆虫は、孵化したばかりの幼虫の時点で成虫を構成する基本的な形態部品が既に形成されている。しかし、翅に代表されるように、ある特定の部位は幼虫期(後胚期)に著しい成長とパターンの変化を示す。本研究ではこの昆虫が示す後胚期における変形の制御機構の解明を目的として、不完全変態フタホシコオロギにおいて光遺伝学を利用した時期組織特異的な遺伝子発現制御系の構築を目指している。この方法が確立できれば、青色光を外部から照射することによって任意のタイミングに任意の細胞で遺伝子の発現を操作することが可能となる。
この技術を可能とするためには、人為的に設計した外来DNA断片をコオロギゲノムに挿入する必要がある。外来DNA断片の挿入にあたり、今年度は、DNA断片のベクターとなるドナープラスミドの設計を改良した上で、昨年度まで用いていたゲノム編集による方法に加えて、トランスポゾンを用いた方法を新たに試みた。その結果、後者の方法を最適化することで、以前に同種で報告されているより格段に高い効率で外来DNA断片をコオロギゲノムに挿入することに成功した。
これまで、外来DNA断片を挿入したフタホシコオロギ系統の作出の困難性が、同種での光遺伝学的手法の確立において障害となっていた。効率的な外来DNAの導入法が確立できたことにより、異なるDNA断片の有効性評価など、コオロギの光遺伝学確立に向けた次段階以降の工程を行うことが可能となった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の計画では前年度にコオロギゲノムへの外来遺伝子の挿入を完了する予定であったが、ゲノム編集を用いた外来遺伝子のノックイン効率の標的遺伝子座によるばらつきが想定以上に大きかったことが、計画がやや遅れている原因である。
本研究では、不完全変態昆虫フタホシコオロギの後胚発生をモデルとすることで、昆虫の脱皮に伴う形態変化の時空間的な制御機構の解明を目的としている。この目的にあたって、フタホシコオロギにおける光遺伝学を利用した時期組織特異的な遺伝子発現制御系の構築を目指している。
昨年度までは非末端相同結合によるDNA修復機構を利用した光遺伝学に必要となるDNA断片のフタホシコオロギゲノムへのノックインを試みていたが、CRISPR/Cas9により非常に高い効率で標的ゲノムDNA領域の切断が起こっていることが確認できたものの、標的領域への外来遺伝子のノックインは成功に至らなかった。本年度は、新たにpiggyBacトランスポゾンを利用した光遺伝学カセットの導入を試みた。近年他の昆虫において有用性が報告された改良トランスポゾン転移酵素を用いたところ、フタホシコオロギについても、以前に報告されたより格段に高い効率で外来遺伝子がゲノムに導入されることが明らかとなった。また、外来遺伝子の導入を確認するための形質転換マーカーを発現するプロモーターおよび、マーカーとなる蛍光タンパク質の種類を検討し、複眼特異的な赤色蛍光シグナルの観察により外来遺伝子が導入された系統を選抜する方法を確立することに成功した。

今後の研究の推進方策

作出した光遺伝学カセット導入系統を用いて、青色光依存的な遺伝子発現の誘導を試験することで、フタホシコオロギにおける光遺伝学的な遺伝子発現操作の有効性を検討する。また、今年度確立したpiggyBacトランスポゾンを用いたフタホシコオロギゲノムへの効率的な外来遺伝子導入法を用いて、さらなる技術的検討が可能となる系統の作出を進める。

次年度使用額が生じた理由

ゲノム編集を利用した外来遺伝子のノックインが難航したことにより、当初の計画より遅延が生じているため、次年度使用額が生じた。今年度新たにトランスポゾンを利用した方法を取り入れたことにより、効率的な遺伝子組換フタホシコオロギ系統の作出法を確立できた。次年度フタホシコオロギにおける光遺伝学を利用した遺伝子発現操作法の確立に向けて、さらなる系統作出を進めるため、また、遺伝子発現操作の細胞への影響を評価するために、本予算を使用する計画である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2019

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] フタホシコオロギの翅発生から探る翅の進化的起源2019

    • 著者名/発表者名
      大出高弘・三戸太郎・新美輝幸
    • 学会等名
      日本動物学会第90回大阪大会

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公開日: 2021-01-27  

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