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2021 年度 実施状況報告書

鳥類の被食が駆動する昆虫の長距離分散: 摂食実験および遺伝構造パターンによる検証

研究課題

研究課題/領域番号 18K19215
研究機関神戸大学

研究代表者

末次 健司  神戸大学, 理学研究科, 准教授 (70748839)

研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2023-03-31
キーワードナナフシ / 単為生殖 / 受動的分散 / 種子散布
研究実績の概要

植物は、様々な方法を用いて種子を遠くへ運び、分布域の拡大を図っている。その主要な方法の一つに、果肉を報酬として鳥に種子散布を託す方法(被食鳥散布)がある。一方で多くの鳥は、果実だけではなく、昆虫も重要な餌資源としている。そこで我々は、卵を持ったメス昆虫が鳥に摂食された場合に、未消化のまま卵が排泄されることで分散に寄与することがあるという仮説を立て、摂食実験を通してこの仮説を検証することにした。こうした鳥による被食を介した分散が成立するには、「卵殻が丈夫である」、「ふ化した幼虫が自力で餌場に到達する」、「単為生殖する」といった条件が必要である。そこで、これらの条件を満たすナナフシの卵をヒヨドリに摂食させた。その結果、多くの卵は破壊される一方で、無傷で排泄され、ふ化する卵もあることが明らかになった。 鳥に食べられても子孫を残す可能性を示す本成果は、昆虫が鳥に捕食されると例外なく死に至るものだという常識を覆すものである。地味な見た目をしていることからもわかる通り,ナナフシが積極的に鳥に食べられ分散している可能性は極めて低いと思われる。とはいえ、ナナフシの多くは、翅をもたず能動的な分散能力が極めて低いことが知られている。よって偶発的で低頻度なイベントであったとしても鳥による捕食が、移動分散や分布拡大、異なる個体群間での遺伝子交流に重要な役割を果たしている可能性もある。現在、新たに開発したSSRマーカーをもとにナナフシの全国的な遺伝構造を把握に努めており、鳥による捕食を介したナナフシの長距離分散が実際にどの程度の頻度で起こっているのかを検討している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

鳥への摂食実験においては、申請書に記載した内容を達成できているものの、コロナウイルス感染症の拡大の影響で一部のフィールド調査を中止せざるを得なかった。このため十分なサンプルが得られなかったためナナフシの全国的な遺伝構造を把握にも一部遅れが生じた。

今後の研究の推進方策

延期したフィールド調査を行う十分なサンプル採取を行った上で、分子実験と遺伝構造解析を推進し、得られた成果は速やかに論文として投稿する。

次年度使用額が生じた理由

コロナウイルス感染症の拡大の影響で一部のフィールド調査を中止せざるを得なかった。このため、旅費が予定額より少ない拠出に留まり、さらにサンプルも十分なサンプルが得られなかったことに伴い、分子実験に関する消耗品代も予定額に満たなかった。これらにより金額に余剰が乗じた。次年度は今年中止した野外調査を行い、得られたサンプルの分子実験を強力に推進するなどの使用計画変更を行う。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Development of microsatellite markers for the geographically parthenogenetic stick insect Phraortes elongatus (Insecta: Phasmatodea)2021

    • 著者名/発表者名
      Nozaki Tomonari、Suetsugu Kenji、Sato Kai、Sato Ryuta、Takagi Toshihito、Funaki Shoichi、Ito Katsura、Kurita Kazuki、Isagi Yuji、Kaneko Shingo
    • 雑誌名

      Genes & Genetic Systems

      巻: 96 ページ: 199~203

    • DOI

      10.1266/ggs.21-00022

    • 査読あり / オープンアクセス

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公開日: 2022-12-28  

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