植物の散布様式の一つに、果肉を報酬として鳥に種子散布を託す方法がある。我々はこのことに着想を得て、卵を持ったメス昆虫が鳥に摂食された場合、未消化のまま卵が排泄され分散に寄与しうるとの仮説を立て、固い卵殻を持つナナフシの卵をヒヨドリに摂食させた。その結果、多くの卵が無傷で排泄され、その一部は孵化することが明らかになった。 さらにナナフシモドキを全国から収集し、COI 遺伝子塩基配列、核マイクロサテライト、SNP解析を行ったが、明瞭な遺伝構造は認められなかった。これらの結果は、翅をもたず、能動的な分散能力が低いと予想されるナナフシモドキにおいて、受動的な長距離移動が起こっていることを示唆する。
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