研究課題
トマトに重要病害を引き起こすトマト萎凋病菌の小型染色体には病原性関連遺伝子やトランスポゾン等の反復配列が集中的に座乗しており,トマトへの病原力を支配している。小型染色体は生存に必須でないため,細菌のプラスミドのように水平伝搬して病原性を獲得し,変異蓄積によって病原性を変化させる。本研究では独自のゲノム編集技術を用いることで,この小型染色体内の不要遺伝子領域を取り除き,糸状菌の人工染色体の作出する。作出した人工染色体の新たな遺伝子工学的有用性を検証すると共に,植物病原菌のゲノム機能・構造ならびに進化機構の解析に用いることで「創って解析・理解する」新たな研究手法の確立に挑戦する。本年度は,Fusarium oxysporumに最適化したCRISPR/Cas9システムとその応用手法の開発に着手した。具体的には,CRISPR/Cas9の構成要素の1つであるsingle-guide RNAを核内で高効率に発現させるために,F. oxysporum f. sp. lycopercisiのゲノムから内生small nuclear U6 RNA プロモーターを取得し,糸状菌のコドン使用頻度に最適化したCas9発現カセットともに供試した。最適化したCRISPR/Cas9システムを用いることで,高効率 (-100%) 標的遺伝子破壊 (Ku80およびLig4) に成功し,本システムは様々なF. oxysporumにおいても利用可能であった。その他,高効率多重遺伝子破壊,点変異導入,外来DNAノックイン手法の開発と小型染色体の独自編集法の開発に着手した。
2: おおむね順調に進展している
F. oxysporumに最適化したCRISPR/Cas9はほぼ想定通りの活性を示し,計画通りに研究を展開することができた。
確立したゲノム編集技術をベースとして小型染色体独自のゲノム編集技術および不要領域を取り除いた人工染色体の開発に引き続き取り組んでいく。条件検討過程で得られる大規模欠損小型染色体の機能解析を平行して進めていく。
DNA合成,シークエンスおよびNGSシークエンスの汎用性が高まり,本年度から想定していたよりも安価に利用することができるようになった。翌年度請求した助成金と合わせて,計画している遺伝子数,ゲノム領域を拡大してさらなる研究の発展を目指す。
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Scientific Reports
巻: 印刷中 ページ: -
10.1038/s41598-019-43913-0
Biotechnology Journal
巻: 13 ページ: 170596
10.1002/biot.201700596