本研究の目的は、ウイルスおよびウイロイド感染時に生じるsmall-interfering RNA (siRNA)が果たす役割を明らかにすることである。これらのsiRNAが作用しうる標的mRNAを正確に同定するために、AGO1およびAGO2とsiRNAの複合体の標的mRNA認識特異性を明らかにすることを試みた。令和2年度には、以下の実験を行った。 (1)AGO1の標的mRNA認識特異性に関して:個別に検証したタバコにおける一過的なルシフェラーゼアッセイの結果を検証しつつ、AGO1-small RNAと標的mRNA間の相補性と遺伝子発現抑制能の関係をより網羅的に検証するために、超並列レポーターアッセイ系の構築を試みた。標的mRNAプールを発現するライブラリーをアグロインフィルトレーションし、次世代シークエンス解析を行なった。その結果、デザインした1万種類以上の標的のリードが漏れなく含まれており、ライブラリーの構築に成功したことが示された。他方、miRNA存在時に個別の一過的アッセイで抑制されていた標的においても、遺伝子発現抑制が認められなかった。今回の結果から、用意した標的中にAGO1-small RNAの機能を阻害するtarget mimicry様の標的が相当量含まれていることが示唆された。 (2)AGO2の標的mRNA認識特異性に関して:AGO2-small RNAの標的mRNA認識特異性を検証するために、引続き、miR390を用いた一過的なルシフェラーゼアッセイ系の構築を試みた。タバコにおいて、miR390が取り込まれうる内在性のAGO2およびAGO7をゲノム編集で破壊することに成功した。このゲノム編集植物においてAGO2とmiR390を一過的に発現させることで、AGO2-small RNAによる一過的遺伝子発現抑制系の確立に成功した。
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