研究課題/領域番号 |
18K19226
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
良永 知義 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (20345185)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | anisakis / 地理的分布 |
研究実績の概要 |
魚体から得たAnisakis simplex s.s. とA. pegreffii3期幼虫の高温耐性をin vitroで調べたところ、A. simplexのほうが高温耐性が低い傾向が得られた。また、ミンククジラから得たA. simplex s.s とA. pegreffiiの虫卵について高温耐性を調べたところ、A. simplexのほうが高温耐性が低い傾向が得られた。これらの結果は、A. simplex s.s.は太平洋沿岸、特に北部太平洋沿岸の低温域に分布すると傾向と合致する。しかしなながら、2018年度に得られたデータは、断片的な部分も多いため、2019年度にも実験を繰り返し、より正確なデータを得る必要がある。 日本近海各地のある種の鯨類から得たAnisakis成虫を分子生物学的手法で分類した結果、主として2種のアニサキスので構成されていた。この結果は、鯨類の分子生物学的系群識別結果と強い関連が認められた。加えて、鯨類個体によっては、成虫はA. pegreffii、幼虫はA. simplex s.s.が優占しているという個体も得られた。日本海側の魚類ではA. pegreffiiが太平洋側の魚類ではA. implex s.s.が優占してるという過去の報告を考え合わせると、虫体の発育段階による優占種が異なる鯨個体は、日本海でA. pegreffiiに感染した後に、オホーツク海域や太平洋海域でA. simplexに感染した個体であることが推察された。このように、Anisaks2種の感染は鯨類の分布や回遊経路を反映していると考えられた。これらについても、さらにサンプル数を増やして精度を上げる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
鯨類のアニサキス成虫の種組成が鯨類の分布や回遊経路を反映しているという可能性が示唆された。これは、研究開始時には予想していなかったことであり、鯨類の研究に対する波及効果が予想される。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度に得られたデータを例数を増やすことによって、精度を高める。また、アニサキス2種の魚類への感染実験を行い、魚体内での生残成長におよぼす水温の影響を把握する。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査捕鯨調査は地点に出かけてて鯨類からのアニサキス虫体のサンプリングを行う予定であった。しかし、調査捕鯨団体との相談により、本年度は現地に出かける回数が一回に限られ、旅費の支出額が予定より少なくなった。
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