研究課題/領域番号 |
18K19227
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
近藤 秀裕 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (20314635)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | バイオテクノロジー / 抗体 / 魚類生殖 |
研究実績の概要 |
平成30年度はまず、既報のニジマス濾胞刺激ホルモン受容体(FSHR)、および黄体形成ホルモン受容体(LHR)の細胞外領域のアミノ酸配列より抗原領域を予測し、これら領域をコードする合成ペプチドを準備しウサギを免疫した。得られた抗血清を用い、ニジマス生殖腺を免疫染色したところ、抗FSHR抗血清を用いた場合、発生段階の卵巣においてシグナルが検出された。また、各受容体をコードする遺伝子断片の増幅を試みたところ、未熟な生殖腺ではいずれの遺伝子も発現が観察されず、発生途中の卵巣ではFSHR遺伝子のみ発現がみられるものの、LHR遺伝子の発現はみられなかった。 増幅したFSHR遺伝子の配列をもとに、真核生物の細胞内で発現するベクターの構築を試みた。FSHRは6回膜貫通型の受容体であり、N末端側に長い細胞外領域が存在する。そこで、N末端側の細胞外領域と一回目の膜貫通ドメインをコードする遺伝子断片を増幅し塩基配列を決定した。今後、本断片にGFP遺伝子を融合し、真核細胞内で発現可能なベクターを構築する。 また、受容体のみならず、ホルモンそのもので免疫した際に性成熟を抑制できるかどうかを明らかとするため、ニジマス濾胞刺激ホルモン(FSH)をコードする遺伝子を用いたDNAワクチンを調製し、個体へ投与した。投与後、DNAワクチン接種区では抗体価の上昇がみられたものの、コントロール区と比べて差は小さく、生殖腺の成長に及ぼす影響もあまり見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに、FSHRおよびLHRに対する抗血清を調製し、FSHRについては組織における発現を確認した。しかしながら、遺伝子発現解析により、FSHR遺伝子は発生段階の卵巣で発現が確認されたものの、LHR遺伝子については発現を確認することができなかった。すなわち、FSHR遺伝子の発現は生殖腺の発生が十分進んだ段階でのみ観察され、LHR遺伝子については発現を確認できなかったことから、これらの受容体を標的として抗体により機能を阻害することは困難である可能性が示唆された。令和元年度は、これら遺伝子の発現動態を把握するため、異なる発生ステージにある卵巣および精巣の組織サンプルを対象に、免疫染色および遺伝子発現解析を行う。また、現在FSHRの細胞外領域を発現するベクターを構築しており、これを培養細胞にトランスフェクションすることで、抗体の評価が可能な細胞とする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度に調製した抗血清を用い、FSHRおよびLHRの組織発現動態を様々な生殖腺の発生ステージで確認するとともに、遺伝子レベルでの発現解析も行う。また、FSHRについては発現ベクターを構築し、培養細胞を用いた受容体と抗体の結合解析を行う。さらに、本抗血清から抗体を分画し、ニジマス個体への投与を試みる。先にも述べたように、各受容体の発現は限られたステージでのみ見られることが考えられるため、経時的な投与を試みる。抗体を投与した個体について、成長を観察し生殖腺の発達を解析する。
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