地球温暖化など地球環境が悪化するなかで、「低環境負荷型・再生可能エネルギー生産技術の確立」は避けては通れない、極めて重要な課題である。研究代表者はこれまでに、「メタン発酵能」「ブタノール発酵能」といった、極めて斬新な発酵能を有する白色腐朽菌を、世界で初めて発見した。そこで本研究では、木質からのアミノ酸合成技術及びバイオ燃料生産技術確立を目的に、高活性リグニン分解菌Phanerochaete sordida YK-624株におけるメタン及びブタノール生合成関連遺伝子群の解明を目指した。 P. sordida YK-624株のウラシル要求性変異株(URA5遺伝子欠損株)に無作為にURA5遺伝子を挿入した形質転換株系統(U系統)から、メタン及びブタノール高産生株の選抜を行った。U系統73株からメタン高産生株及びブタノール高生産株を探索した結果、ブタノール高生産株の取得には至らなかったが、メチオニン添加培地においてメタンを高生産する株(M株)の取得に成功した。 M株ゲノムにおけるURA5遺伝子挿入位置を特定するため、様々なプライマーを設計し、Inverse PCRを行ったが、URA5遺伝子挿入位置の特定には至らなかった。そこで、Miseqを用いて、M株の全ゲノム解析を実施した。しかしながら本方法を用いてもURA5遺伝子挿入位置の特定には至らなかった。URA5遺伝子挿入位置を特定出来なかった理由を考察すべく、各種分析を行ったところ、M株は多核菌糸(2~6核)を形成しており、ある特定の核にのみURA5遺伝子が挿入されたため、多核状態から抽出したゲノムにおいて挿入位置が特定出来なかったと断定した。 今後、M株より単核細胞を調製し、ゲノム解析することで、URA5遺伝子挿入位置を特定予定である。
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