研究課題/領域番号 |
18K19230
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高野 俊幸 京都大学, 農学研究科, 教授 (50335303)
|
研究分担者 |
上高原 浩 京都大学, 農学研究科, 教授 (10293911)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
キーワード | セルロース / タンニン / リグニン / 鏡像異性体 / ラセミ体 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、天然木質バイオマス成分の鏡像異性体として、(1)天然セルロースの鏡像異性体とラセミ体、(2)加水分解型タンニンの鏡像異性体、(3)リグニン前駆物質(モノリグノール配糖体)の鏡像異性体に焦点を当てて研究を行っており、本年度、主に、対象とする成分の鏡像異性体の合成を行った。 具体的には、(1)については、本年度までに、研究者のグループで開発されたセルロース合成法(開環重合法)を用いて、天然セルロースの鏡像異性体の合成法を確立することができた。また、開環重合の反応条件の緩和にも成功した。現在、鏡像異性体の合成に関する論文の執筆作業を行っている。また、物性評価として、天然セルロースとその鏡像異性体のアセチル化物のステレオコンプレックスについても検討し、それらのX線解析結果から、両者がステレオコンプレックスを形成していることが示唆された。一方、天然セルロースのラセミ体の合成についても、上述の開環重合法を用いて合成を行い、構造解析データの細部の照合が未了であるものの、ラセミ体についても問題なく、合成できることを確認した。(2)については、研究者のグループで開発された加水分解型タンニンの合成法を一部改良して、その鏡像異性体の合成に適用し、その合成に成功した。(3)については、昨年度までの結果(リグニン前駆物質の鏡像異性体の合成とその輸送動態の結果)をまとめて、論文として発表した。また、前駆物質の糖構造の輸送動態への影響を解明するために、新たなリグニン前駆物質(モノリグノール配糖体)のモデル化合物の合成を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、本年度までに、本研究課題で対象とするセルロース、加水分解型タンニン、リグニン前駆物質(モノリグノール配糖体)の鏡像異性体の合成に成功した。また、セルロースの鏡像異性体については、性質評価の予備評価まで進展し、リグニン前駆物質(モノリグノール配糖体)の鏡像異性体については、論文としてまとめると共に、新たな観点(リグニン前駆物質の糖構造の輸送動態への影響)についての検討を開始した。そのため、本研究課題は、”おおむね順調に進展している”と判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度までに、本研究課題で対象とするセルロース、加水分解型タンニン、リグニン前駆物質の鏡像異性体の合成について終了した。当初の研究計画とおり、次年度(研究の最終年度)には、こららの鏡像異性体の性質評価、たとえば、セルロースの鏡像異性体については、ステレオコンプレックスの評価、キラル分離能の評価、加水分解型タンニンの鏡像異性体については、タンパク質沈殿能の評価、リグニン前駆物質の鏡像異性体については、新たなリグニン前駆物質のモデル化合物の細胞膜透過性の評価などを予定している。なお、セルロースの鏡像異性体の合成については、大量合成の課題が残っており、それも合わせて検討の予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究実績の概要で述べたように、本年度までに、対象とする天然成分の鏡像異性体の合成に注力したこと、およびその合成が比較的少量スケールであったため、当初の予定より、研究経費の使用が少なかった。次年度、対象とする天然成分の鏡像異性体の大量スケールので合成とその性質評価を行う予定であり、実験器具の大型化、性質評価に必要な物品の新規購入を行う予定である。
|