研究課題/領域番号 |
18K19231
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
坂本 正弘 京都大学, 農学研究科, 准教授 (40303870)
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研究分担者 |
高部 圭司 京都大学, 農学研究科, 教授 (70183449)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 心材形成 / RNA-seq / 移行材 / 師管転流 |
研究実績の概要 |
本研究は樹木の心材形成において、その形成時期を決定する環境要因とその誘導因子を探索することにある。本年度は研究計画に従ってスギを材料として季節ごとの葉および枝の採取、および辺材から心材へ形成される移行材部の採取を行なった。以下に具体的な研究について報告する。 京都大学フィールド科学教育研究センターにて植栽されているスギを用いて、2018年11月、2019年1月および3月の3回にわたってサンプリングをおこなった。採取した葉は直ちにドライアイスにて凍結した。研究室に持ち帰った後に液体窒素中で粉末化し、RNAの抽出を試みた。スギなどの樹木の葉には大量のペクチン様物質が含まれているため、通常のRNA抽出法では良好なRNA試料が抽出できなかった。多糖類を多く含む試料からの抽出に適したRNA抽出キット(RNAすいすい:リーゾ社製)を使用し抽出を試みたところ、比較的良好なRNAを得ることができた。 同時期に採取した枝から計画に従って師管転流物質の抽出を試みた。まず、枝の樹皮をナイフで剥ぎ取り、形成層部分を観察したが、師管のみを切り離すには組織が小さく、採取が困難であった。そこで、形成層を含む部分を縦10mmから15mm程度の短冊状に切断し、複数の断片をまとめてメッシュ付きのマイクロチューブに詰めて遠心をおこなった。微量遠心機の最高回転数(15,000回転)において30分遠心したものの、抽出液は得られなかった。 また、2019年3月には樹齢役50年のスギを伐採し、移行材を採取した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
季節ごとの葉からRNA抽出に関しては順調に進んでいる。今後は、季節ごとの試料を準備し、RNAを抽出し、ある程度の試料がそろった段階でRNA-seq解析に供する。枝からの転流物質の探索に関しては、枝からの師管分離が困難であったため、転流物質の探索段階までは進んでいない。今後は師管を含む部位の分離方法について検討するとともに、抽出方法についても検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
葉からのRNA抽出は順調に進んでいる。従って、今後は季節ごとの試料を採取し、RNAを抽出した段階でRNA-seq解析に供試する予定である。 枝の師管からの抽出液の確保ができなかったので、次は枝から樹皮をはいだ後に形成層を含む領域を剥ぎ取り、冷水に浸けて低温抽出を行う予定である。組織からの流出物をなるべく含めないようにするために、低温条件下で緩やかに抽出する予定である。得られた抽出液を濃縮した後に抽出液中に含まれる核酸、タンパク質、各種化合物の解析をおこなう予定である。 また、移行材部分も採取できたので、葉における発現遺伝子との比較のために移行材からもRNAを抽出し、移行材領域において発現している遺伝子の解析も合わせて行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は試料調製のために予定より時間を要したため、RNA-seq解析に供する試料数が予定より少なかったために残額を生じる結果となった。次年度以降は試料調製も順調に推移する予定であるので次年度分と合わせて計画的に使用する予定である。
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