研究課題/領域番号 |
18K19234
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
堤 祐司 九州大学, 農学研究院, 教授 (30236921)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | ペルオキシダーゼ / 基質万能性 / 形態形成 / 植物ホルモン代謝 / 分化・成長 |
研究実績の概要 |
1)ポプラ形質転換体(CWPO-C過剰発現体、発現抑制体)の創出 CWPO-Cの過剰発現体および発現抑制体(RNAiおよびアンチセンス)の形質転換効率(形質転換体の発生効率)は、数百分の1と極めて低かった。このことは、CWPO-Cがポプラの分化・発生についてクリティカルな役割を担っていることを示唆するものである。現在、過剰発現体1ライン(WTの約30倍発現)およびRNAi3ラインおよびアンチセンス1ラインが得られており、今後さらには形質転換体を作成しながら解析する。過剰発現体1ラインのみの観察結果ではあるが、過剰発現体では中空根(地上部の茎から発生する根)の発生が顕著であり、CWPO-Cが、分化や形態形成に重要な役割を果たしていること強く示唆する結果である。 2)ポプラおよびシロイヌナズナの分化・成長とフェアリー化合物の効果 ポプラWTの茎切片を用いて、不定芽形成における4種のフェアリー化合物の影響を検証した結果、AICAに不定芽形成促進効果が見られたが、他の3種には関しては有意な効果は認められなかった。一方で、CWPO-Cと植物の分化・生長、植物ホルモンの相互作用を短期間で確認するため、CWPO-C過剰発現アラビドプシスを作成し、外因性4種のフェアリー化合物の外因的投与効果を検証した結果、AOHはWTに対し成長促進効果を示したが、CWPO-C過剰発現体ではAOHの効果がキャンセルされたことから、CWPO-CがAOHを異化したと予想された。さらに、シロイヌナズナWTとCWPO-C過剰発現体の内生フェアリー化合物を定量した結果、CWPO-C過剰発現体では顕著にAOH量が低下していたことも、上記の結果と良く整合する。なお、リコンビナントCWPO-Cによるフェアリー化合物のin vitro代謝実験においては、AOHとAICAに対する変換活性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
形質転換体の作成については計画より遅れている。他の計画は概ね当初計画どおりに進行している。遅れの理由として、CWPO-Cタンパクが、分化や発生に重要な役割を担って可能性が挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
ポプラ形質展開体の作成は計画より遅れており、その原因の一つが、CWPO-Cタンパクが、分化や発生に重要な役割を担っている可能性が考えられるからである。今後も形質転換体の作成を継続するが、同時並行的にのCWPO-C機能ホモログであるシロイヌナズナAtPrx71の過剰発現体ならびにノックアウト抑制体を用いて、解析を進める。 研究の進行過程で、CWPO-Cによるオーキシン調節機能が強く示唆されたことから、次年度は内生ホルモンとしてオーキシン定量も計画に加える。
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次年度使用額が生じた理由 |
H30年度の研究を進めた結果、CWPO-C発現とオーキシンに重要な関係がある可能性が強く示唆された。さらに、オーキシンの濃度勾配は植物器官の微細な部分で生じること、その濃度勾配発生にCWPO-C発現が関与していることが示唆された。そこで、H31年度は微細な組織でのオーキシン定量を行う専門技術と経験を有する研究者を分担に加えるために、次年度に研究経費を繰り越す必要が生じた。 H30年度の研究を進めた結果、ポプラのCWPO-C形質転換体発生効率は通常の形質転換に比べて極めて低かった。次年度は、当初の予想に反して大量の形質転換操作が必要となるため、培養スペースの補充拡大が必須となることが判明した事から、その購入代金を次年度に繰り越す必要が生じた。
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