研究課題/領域番号 |
18K19236
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
和田 実 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (70292860)
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研究分担者 |
山口 健一 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (90363473)
稲岡 健ダニエル 長崎大学, 熱帯医学・グローバルヘルス研究科, 助教 (10623803)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 低酸素適応 / 呼吸鎖機能 / 底生線虫 |
研究実績の概要 |
海産の底生線虫は微小ベントスとして自由生活を営むが,堆積物中の低酸素化に対し,アニサキス等の寄生性線虫と同様の嫌気呼吸を行う可能性がある.本研究は①寄生線虫と底生線虫のミトコンドリア呼吸鎖機能の比較を通してこの仮説を検証し,海産線虫の低酸素適応の一般則を導くとともに,②内湾の貧酸素化に伴う底生線虫の呼吸鎖機能の動態を明らかにし,③水産養殖業に影響を及ぼす海産寄生虫のミトコンドリア呼吸鎖を標的とした新たな感染症対策の創出を目的として掲げている。平成30年度は、線虫のミトコンドリア呼吸鎖機能解析およびプロテオミクス解析を可能にする試料調整の効率化に取組み、(1)線虫類を堆積物中から分取するために従来から用いられているコロイド状シリカゾルの密度勾配遠心において、水平遠心ローターと固定角遠心ローターを用いて得られる線虫個体数に統計的に有意な差はなく、大容量の固定角ローターを用いることが可能であることを見出した。また、(2)人工培養したモデル線虫Caenorhabditis elegansを高塩分組成の溶液で固定後に体細胞の呼吸酵素活性を測定し、未固定の場合と比較した際、予備的な試験段階だが、固定試料でも未固定の場合の50%以上の呼吸酵素活性が保存されることを見出した。さらに(3)調査海域である大村湾中央部の表層堆積物試料を(2)と同様の固定液で保存したところ、1尾ずつ分取した線虫について個体ごとに18SrRNA遺伝子領域をPCR増幅することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由1:夏の低酸素期に底生線虫を大量採取する試みは大学附属練習船の採泥器を用いて2回の観測航海において行ったが、作業の安全を確保しながら採泥に従事できた時間は1航海あたり6時間以内であり、得られた泥量は目標に達しなかった。 理由2:モデル線虫であるC.elegansを米国の保存機関から購入する必要があったが、先方からの郵送の大幅な遅延や、送付されたC.elegansの生存状態の不良などが度重なり、未固定(生体)の線虫試料を用いた呼吸鎖解析の開始が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
大村湾内の堆積物試料を採取して研究室に持ち帰った後、人為的な低酸素条件下に置くとともに培養した細菌細胞を添加し、低酸素耐性をもつ捕食性線虫の選択的な集積を試みる。そこから得られる線虫個体をフラックスアナライザーとして知られる呼吸代謝解析装置に供し、呼吸鎖スウィッチング仮説の直接的な検証をすすめる。また、呼吸鎖プロテオーム解析の材料を確保するため、モデル線虫および現場由来の線虫の人工培養に積極的に取組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
・次年度使用額が生じた理由:モデル線虫であるC.elegansを米国の保存機関から購入する必要があったが、先方からの郵送の大幅な遅延や、送付されたC.elegansの生存状態の不良などが度重なり、未固定(生体)の線虫試料を用いた呼吸鎖解析について予定の一部しか実施できず、解析用の試薬類の購入を見送ったため。 ・次年度の使用計画:実施予定だった未固定線虫試料の呼吸鎖解析を次年度に実施するため、必要な試薬類を購入する予定である。
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