研究課題/領域番号 |
18K19238
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
糸井 史朗 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (30385992)
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研究分担者 |
高井 則之 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (00350033)
小島 隆人 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (60205383)
高谷 智裕 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (90304972)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | フグ毒 / テトロドトキシン / TTX / オオツノヒラムシ / Planocera / COI |
研究実績の概要 |
フグはその体内に保有する膨大な量の毒をどこから獲得しているのか。この疑問を明らかにすべく、多量の毒を体内に蓄積するツノヒラムシ属のヒラムシに着目し、以下の研究を実施した。 前年度までに設計したオオツノヒラムシを特異的に検出できるプライマーを用いる種特異的PCRの精度を確認するため、近縁のツノヒラムシやPlanocera sp.を対象に当該手法を適用した結果、当該手法はオオツノヒラムシを特異的に検出できることが明らかとなった。この手法を利用して、フグの消化管内からオオツノヒラムシが検出されるか否か調べた。三浦半島のオオツノヒラムシが生息する地点近傍のクサフグ、および三陸沿岸で漁獲されたショウサイフグの消化管内容物を対象に調べたところ、いずれの海域で採取されたフグ類の消化管内容物から特異バンドが検出されるとともに、これらDNA断片の塩基配列が、オオツノヒラムシのCOI配列と完全に一致した。これは、日本列島各地でオオツノヒラムシがフグ類にTTXの供給していることを示唆している。 また、三浦半島の葉山沿岸部を中心にツノヒラムシ属とその近縁種の探索を行った。その結果、オオツノヒラムシは大潮の最干時に露出する潮間帯で認められただけでなく、5 mを超える水深帯にも分布していることが確認された。 以上、本研究の結果は、フグの毒化に大きな影響を与えることが考えられているオオツノヒラムシが比較的深い水深帯にも相当数分布していることを示唆しているだけでなく、様々なフグのTTXの獲得源になっていることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の当初計画では、深場にもオオツノヒラムシが分布していることを予想していたが、これを裏付けるデータが得られた。また、異なる海域で漁獲された複数のトラフグ属の種間でもオオツノヒラムシの摂餌を示唆するデータが得られており、種々の海域でオオツノヒラムシがフグの毒化に寄与していることが明らかになりつつある。以上の進捗状況から、おおむね順調に進展しているものと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、深場にもオオツノヒラムシが分布していること、異なる海域で漁獲された複数のトラフグ属の消化管内容物でオオツノヒラムシの摂餌を示唆するデータが得られたことから、さらにこれらの事例を積み重ねていく予定である。また、ツノヒラムシ属にはいくつもの種が知られていることから、これらツノヒラムシ属のヒラムシを採取し、TTX保有の有無を確認する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒラムシの夜間時の生態解明に必要な機器の準備に当初計画よりも安価に導入できたため。この残額は、次年度に試験する際に活用する予定である。
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