研究課題/領域番号 |
18K19239
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
古谷 研 創価大学, 理工学研究科, 教授 (30143548)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | ヤコウチュウ / 赤潮 / 共生藻 / 温暖化 |
研究実績の概要 |
本課題の柱であるフィールドにおけるミドリヤコウチュウの動態解明を行うため、前年度と同様に研究期間を延長したが、コロナ禍による海外渡航規制および相手国側の受け入れができないことがあり、現場における調査を全く実施できなかった。こうした状況から今年度は培養しているミドリヤコウチュウおよび共生藻の分子系統解析を行った。 まず、ミドリヤコウチュウと共生藻の18S rDNA増幅のための特異的なプライマーセットを作製した。データベースからヤコウチュウの18S rDNA配列から共生藻には機能しないPCRプライマーセットを設計した。同様にミドリヤコウチュウには機能しないPCRプライマーセットを設計した。プライマーセットの特異性も確認され、共生藻とホストを分離すること無く解析できるプライマーセットが得られた。ミドリヤコウチュウ4培養株共生藻1株より1細胞ベースでサンガーシーケンス解析を行った。 ヤコウチュウの18S rDNAの部分塩基配列間での相同性を調べたところ、全ての塩基配列間で100%の相同性を示した。相同性検索から米国産アカヤコウチュウNS3株(DQ388461.1)との相同性が98.4~99.2%と示された。また、共生藻は中央アラビア海表層で採取されたミドリヤコウチュウからのP. noctilucae32株(KR822615.1)との相同性が99.0~99.3%と示された。 当研究室が以前得たヤコウチュウのデータを加えて近隣結合法による進化系統樹を作成したところ、今回解析した全株はインドネシアとタイで採取されたミドリヤコウチュウとブートストラップ値98%で同一のクラスターを形成した。一方でフィリピンのミドリヤコウチュウとアカヤコウチュウNS3株、相模湾のアカヤコウチュウとはブートストラップ値が81%で異なるクラスターを形成し、ミドリヤコウチュウ間でも系統の違いがあることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までで、培養実験は当初の予定通りの成果を得ている。しかしながら、本課題のもう一つの柱であるフィールド調査によるヤコウチュウブルームの動態解明について当初予定していた以上の成果を得るべく研究期間を延長したがコロナ禍のため現地調査が全くできなかった。一方で、今年度実施したミドリヤコウチュウの系統解析により、ミドリヤコウチュウ間にはインドネシアおよびタイからの株と、フィリピンからの株の間に違いがあることが判明し、また、フィリピンのミドリヤコウチュウは温帯域のアカヤコウチュウに近いことが明らかになり、これは当初予定していた以上の成果である。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍が落ち着いて、安全な現地調査が可能なった場合には、マニラ湾におけるフィールド調査を行い、窒素収支を加えた群集動態解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題の柱であるフィールド調査によるヤコウチュウブルームの動態解明について、これを実施すべく研究期間を延長したが、コロナ禍による海外渡航規制および相手機関の受け入れ体制が整わなかったことにより現地調査ができなかった。このため研究期間を再延長して、2022年度における野外調査の実施を計画する。これにより、研究を終了する予定である。
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