研究課題/領域番号 |
18K19240
|
研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
高橋 俊一 基礎生物学研究所, 環境光生物学研究部門, 准教授 (80620153)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
キーワード | サンゴ / 捕食 / 蛍光 / 蛍光タンパク質 / 海洋性微生物 |
研究実績の概要 |
熱帯や亜熱帯の沿岸に広がるサンゴ礁には生物多様性に富んだ生態系が築かれている。しかし、サンゴ礁の面積は減少の一途をたどっており、その主な原因の一つが海水温の上昇によるサンゴの白化である。白化した直後のサンゴは生きていて、褐虫藻を再共生させて回復するか、そうでない場合は餓死する。この回復の可否に大きな影響を与えるのが、サンゴの捕食力で、それはサンゴ種によって異なる。しかし、捕食力の違いが何に起因するかは分かっていない。研究代表者は、サンゴの蛍光タンパク質由来の蛍光が餌となる微生物の誘引に働くと考え、その誘引力の違いが捕食力の違いに繋がっているという仮説をたてた。実験は、沖縄県の瀬底研究施設で行った。材料となる微生物(プランクトン)は、施設周りの環境の異なる3地点から(浅場、深場、汽水域)、4つの時間帯(朝、昼、夕、晩)に採集した。それぞれの材料を用い、正もしくは負の走光性を示す運動性プランクトンを単離し、顕微鏡を用いた簡易的な生物種の同定を行った。その後、それぞれの生物種の走光性の特徴(光波長や光強度)を調べ、最後に蛍光による誘引効果を調べた。その結果、ある特定の場所の、ある時間帯に採取される生物種において、緑色蛍光に誘引される現象が見られた。しかし、サンゴの生体を用いた実験で、緑色蛍光による誘引や捕食は確認できなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
サンゴ礁域には多くの運動性微生物が存在していること、それらが走光性を示すことは分かった。しかし、当初の予想に反し、蛍光に対して正の走光性を示す(誘引される)微生物(プランクトン)がほとんど見つからない。そのため、条件検討に多大な時間が費やされてしまった。
|
今後の研究の推進方策 |
単離培養されたコペポーダを用いた室内実験と、フィールドから単離された微生物(プランクトン)群を用い、サンゴの蛍光に誘引されやすい条件を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
追加実験に必要な物品購入費と、成果発表に必要な論文掲載料が必要となったため。
|