地球温暖化への対策や持続可能な資源管理など、近年、農山村においても環境・資源の保全に対するニーズが高まってきている。本研究では、これまでの我が国の農業環境政策には見られない新たな政策デザインを検討することを目的としている。 本年度は、昨年度までに積み残しとなっていた農業生産に伴う環境負荷排出の評価方法の開発、海外研究者を招へいしてのシンポジウム、web調査などを実施する計画であった。しかし、主として研究代表者の教育及び学内業務の負担が当初の予想以上に大きく、研究について十分な進捗を得ることはできなかった。 進捗があった点について述べると、評価方法の開発について具体的には、農業生産のうち稲作に焦点を当て、①生産過程に投入されるエネルギー量の推計、および②投入エネルギー量等をもとにしたエネルギー技術効率の推計、の2点を試みた。そのうえで、計測したエネルギー技術効率と農家の経営規模等との関係を解析した。研究成果の一部は、学会発表として公表することができたが、当初の目的であった政策デザインなども含んだ学術論文などの形で取りまとめるまでには至らなかった。今後の研究の展開としては、①評価対象とする環境負荷や環境影響物質の種類を拡張する点、②規模以外の要因で環境影響の違いを比較分析する点、③稲作以外の作目にも分析対象を拡張する点、④生産段階のみではなく加工や流通段階も含んだ評価とする点などが示唆された。
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