筆者は、定住者とその地域に関わりや関心を持つ非定住者でつくるコミュニティのことを「拡大コミュニティ」と呼んで、東日本大震災の被災地復興の一つのあり方として注目してきた。本研究では、こうした「拡大コミュニティ」が、被災地だけではなく、広く我が国の農山漁村地域の持続的発展のために重要な役割を果たしうるという仮説のもとに、「拡大コミュニティ」の類型化を試みるとともに、類型ごとにその役割と特徴を整理した。そして、拡大コミュニティがどれぐらい持続的な存在でありうるのかについて考察を加えた。結果は以下の通りである。 第1に、拡大コミュニティは、非定住者の属性に応じて、①非同居家族(他出家族)、②非居住出身者(他出出身者)、③関係・交流者、④地域ファンの4類型に分類できる。第2に、非定住者の関わり方としては、大別して、①地域運営に参画、②地域活動に参加、③地域運営・活動への間接的支援(金銭支援、情報提供など)の3つがある。第3に、地域(集落)の人口減少および少子高齢化とともに、非定住者の役割が拡大し、中には非定住者の参画がないと維持できない地域(集落)も現れている。第4に、拡大コミュニティの発展は、移住者・帰還者の増加にもつながりうる。第5に、拡大コミュニティの存続には事務局の存在が重要だが、定住者・非定住者を問わず、事務局人材が不足している現状がある。この点については、既存の地域コミュニティ全体の課題であり、近年では地域おこし協力隊の活用等も行われているが、地域コミュニティ政策として、恒常的な人材確保策を講じる必要があると考える。
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