研究実績の概要 |
本研究の大きな目標はがんの微小環境を代謝を中心とした空間的・時間的な評価を可能とする方法・技術を確立することにある。当該年度の研究進捗状況としてはまず、その基礎となるインビトロでの代謝評価法を確立することである。既に申請者はATP、ADP、AMP、NADHのHPLCを用いた評価法や脂質過酸化の質量分析法を用いた評価法については既に確立していたが、酸素消費率(OCR)の評価法や癌の糖代謝にともなう細胞外酸性化速度(ECAR)については研究当初は検討を開始している最中であった。本年度はインビボで重要となる培養系でのミトコンドリアの酸素消費率とpHについて電子スピン共鳴法(ESR)を用いて中心的に研究を進めてきた。その結果、OCRについては5,9,14,18,23,27,32,36-octa-n-butoxy-2,3-naphthalocyanine (LiNc-BuO)を用いて、ECARについては2-(4-((2-(4-amino-4-carboxybutanamido)-3-(carboxymethylamino)-3-oxoproylthio)methyl)phenyl)-4-pyrrolidino-2,5,5-triethyl-2,5-dihydro-1H-imidazol-1-oxylを用いたESRを用いた方法論をヒト子宮頸癌HeLa細胞、ヒト大腸がん細胞SW480ならびにヒト肺がん細胞A549細胞を用いて開発した。更にはプレリミナリーではあるが研究分担者の平田らのグループと動物実験も開始し、担癌マウスでのECARのイメージングによる評価系をマウス頭頸部がん移植系で確立しつつある(Anal. Chem. 2018, 90, 13938-13945)。次年度はESRによるpHイメージングの生物学的意義とあわせて酸素(OCR)イメージングについても進めて行く予定である。
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