研究課題
脊髄が再生するためには神経細胞から神経突起と呼ばれる足が発芽し、神経突起が伸張した軸索と呼ばれる長い足を介して他の神経細胞とネットワークを作る必要がある。脊髄損傷後の脊髄再生治療が難しい原因として、軸索を覆うミエリンから放出される阻害物質、損傷後の脊髄に生じるグリア瘢痕と呼ばれる組織変化から放出される阻害物質などによって、神経細胞の軸索再生の阻害が起こると知られている。本研究では、低強度パルス超音波を利用して神経細胞の治癒力を高め、脊髄損傷治療法を開発する第1段階として、中枢神経再生に最も重要である神経細胞の軸索伸展を低強度パルス超音波で制御するための検討をin vitroで行なっている。前年度はミエリン由来軸索再生阻害因子Nogo-A存在下で、低強度パルス超音波が神経細胞の神経突起を伸張させることを観察した。神経突起の発芽・伸展には細胞の変形が伴い、これには主に細胞骨格タンパク質であるチューブリンおよびアクチンが重要な働きをしている。本年度は神経突起進展のメカニズム解明のために、低強度パルス超音波がアクチン・チューブリンに与える影響、またそれに伴う細胞全体の形態変化を検討した。生きた神経細胞のアクチンもしくはチューブリンを染色し、低強度パルス超音波照射中および照射後に経時的に観察した。本年度の研究成果により、低強度パルス超音波は細胞骨格タンパク質に影響を与えることで神経軸索再生に寄与する可能性が示され、今後の展開が期待される。
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Ultrasonics, IEEE Symposium (IUS)
巻: 2019 ページ: 1308-1310
10.1109/ULTSYM.2019.8926300