研究課題
RNase T2は一本鎖RNAを非特異的に分解するエンドリボヌクレアーゼである。原核生物から真核生物、更にはウイルスにも存在することから、生物学的に普遍的かつ根源的な役割を担うと考えられるが、哺乳動物での機能に関する報告はあまり多くない。そのような中、ヒトにおいては、RNase T2は当初がん抑制因子として同定されたが、その後、「先天性嚢胞性白質脳症」(神経変性疾患)の患者にRNASET2遺伝子の欠損が報告された。さらに最近、複数のゲノムワイド関連解析の報告から、RNASET2遺伝子座の一塩基多型が様々な疾患に関連することが示唆されている。そこで申請者は、このうち特に遺伝子欠損に依存すると考えられる神経変性疾患の発症機構を明らかにするために、RNase T2遺伝子欠損マウスを作出した。しかし、神経変性疾患は認められず、代わりに肝脾腫をはじめとする免疫異常を自然発症することがわかった。すなわち、遺伝子欠損マウスの表現型は予想に反してヒト患者の表現型とは異なっており、単純には「外挿」できないことが明らかになった。そのため、RNase T2の自然免疫系への関わり、この異常による自然免疫系の破綻・多様な疾患誘導の全容解明を目指した。マウスの遺伝的背景による表現型の変化を確認するため、樹立時のC57BL/6N(B6N)からBALB/cA(BALB)系統への戻し交配を行い、BALB背景のRNaseT2 KOマウスの樹立を行ったところ、B6N背景よりもBALB背景では症状が軽減することが明らかになった。また、オートファジー異常の可能性を見出したことから、GFP-LC3 Tgアリルを導入し、オートファジーを可視化できるKOマウスの樹立に成功した。解析の結果、RNaseT2が欠損するとオートファジーの後期に異常が生じることが明らかになった。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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