研究課題
本研究は、哺乳類において発達期の脳へのエストロゲン(EB)の感作が、生涯にわたり生殖機能を抑制する脳内プログラミング機構の解明を目的とした。出生直後(発達期)の雄ラットに、EBを生後10日間感作させることにより、成長後も性成熟せず、精巣の萎縮と精子形成不全がおこり、不可逆に生殖機能が抑制されることを示した。また、新生仔期のEB投与により、パルス状黄体形成ホルモン(LH)分泌が顕著に抑制され、血中のテストステロン(T)濃度が著しく低下した。新生仔期EB投与により、視床下部弓状核におけるキスペプチン、Kiss1(キスペプチン遺伝子)、およびキスペプチン-ニューロキニンB -ダイノルフィンAニューロン(KNDyニューロン)を構成するTac3(NKB遺伝子)とPdyn(Dyn遺伝子)発現が顕著に抑制された。一方で、新生仔期のEB投与は、弓状核における他の神経ペプチド遺伝子(Ghrh, Pomc, Agrp)発現には影響を及ぼさなかった。これらの結果から、発達脳へのエストロゲン感作による生殖機能抑制は、弓状核KNDyニューロン特異的なKNDy遺伝子発現の不可逆な抑制、ひいては下垂体からの性腺刺激ホルモン分泌抑制に起因することが明らかになった。さらに、新生仔期にEBを投与したラットに外因性キスペプチンを投与した結果、LHの顕著な増加が認められたことから、発達脳へのエストロゲン感作による生殖機能抑制は、内因性のキスペプチンの合成・放出が抑制されることによることが示唆された。以上より、発達期脳のへのエストロゲン感作による不可逆かつ生涯にわたる生殖機能停止が、生殖中枢である弓状核KNDyニューロンにおけるKiss1、Tac3およびPdyn発現の特異的かつ不可逆な抑制に起因することが明らかになった。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (17件) (うち査読あり 17件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件)
J Reprod Dev
巻: 66(2) ページ: 125-133
10.1262/jrd.2019-149.
巻: - ページ: -
10.1262/jrd.2019-097
Asian Australas J Anim Sci
10.1262/jrd.2019-145
10.1262/jrd.2019-164
10.1262/jrd.2020-026
Endocrinology
10.1210/endocr/bqaa092.
Neuroendocrinology
巻: 32(6) ページ: -
10.1111/jne.12857.
巻: 160(2) ページ: 473-483
10.1210/en.2018-00882
巻: 65(2) ページ: 129-137
10.1262/jrd.2018-122
巻: 160(5) ページ: 1223-1233
10.1210/en.2018-00732
Front Endocrinol
巻: 10 ページ: 312-312
10.3389/fendo.2019.00312
Domest Anim Endocrinol
巻: 68 ページ: 83-91
10.1016/j.domaniend.2018.12.011
SVU- Int J Vet Sci
巻: 3(1) ページ: 10-26
10.21608/SVU.2019.16569.1027
巻: 65(5) ページ: 397-406
10.1262/jrd.2019-048.
J Obstet Gynaecol Res
巻: 45(12) ページ: 2318-2329
10.1111/jog.14124
Endocrine J
巻: 67(4) ページ: 409-418
10.1507/endocrj.EJ19-0444