研究課題/領域番号 |
18K19273
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
鳩谷 晋吾 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (40453138)
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研究分担者 |
杉浦 喜久弥 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (30171143)
森 英樹 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30450894)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | iPS細胞 / ネコ / 新規幹細胞 / エリスロポエチン / 胚盤胞期胚 / XEN細胞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、iPS細胞よりもやや分化しているが安定して増殖するイヌとネコの新規幹細胞である人工多能性胚体外内胚葉細胞(iXEN細胞)を作製し、これをEPO産生細胞へと分化させることで、慢性腎臓病罹患動物の治療に応用することである。 現在までに以下のような研究成果が出ている。 1. 昨年までの研究でネコiXEN細胞よりも未分化なiPS細胞を作製できる可能性が示された。そこで、ネコ胎子線維芽細胞に自然に除去される仕組みを持ったセンダイウイルスベクター(SeVdp(KOSM)302L)を使用して、初期化遺伝子を導入後、遺伝子に傷がつかないネコiPS細胞の作製を試みたところ、感染細胞播種数を最適化しTGFβ阻害剤を添加することで、ネコiPS細胞の初代コロニーを効果的に出現させることができた。これらのiPS細胞を継代することで、3つのネコiPS細胞株が得られた。しかし、免疫染色では、同一コロニー内でSeVdp陽性細胞と陰性細胞が混在していた。 2. ネコiPS細胞コロニーからのSeVdp陰性iPS細胞を分離するために、得られたネコiPS細胞株のコロニーを、酵素によって細胞を一個ずつに分離し、シングルセル培養した。その結果、ネコiPS細胞株から合計27のクローンが作製されたが、すべてのクローンでSeVdp遺伝子の発現が確認され、完全にSeVdpを取り除くことはできなかった。 3. ネコの卵巣を輸送すると、卵子の発生能が低下することが知られている。そのため、ネコ卵巣の効果的な輸送液について検討したところ、臓器保存液を使用することで卵子の発生能力を維持できることが分かった。これらの卵子を用いることで効果的に胚盤胞期胚を作製可能となった。今後、ネコ胚盤胞期胚を用いて、正常な発生過程におけるES細胞およびXEN細胞への分化について調べることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遺伝子挿入のないウイルスフリーなイヌiXEN細胞の作製は可能となっている。また、ネコiXEN細胞の作製には至っていないが、その過程でネコiPS細胞が得られており、これを利用してEPO産生細胞を作製できる可能性が示された。さらに、ネコ胚盤胞期胚の作製を安定的にできるようになっている。しかしながら、幹細胞をEPO産生細胞へ分化させる試みがまだ行われていないことから、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まだ、作製できていないネコiXEN細胞の作製を進める。また、研究過程で得られたネコiPS細胞については、SeVdpを取り除くことが必要である。これについては、初期化時の培養条件をさらに検討することで改善できると考えている。さらに、イヌとネコのiPS細胞とiXEN 細胞の最適な培養条件の検討を行う。サイトカイン、低分子化合物が培養維持に重要であると予想できており、真に必要な因子を明らかにする。 また今後は、イヌとネコのiPS細胞およびiXEN細胞を用いてEPOへ分化させる研究を進めていく。特に、最終的な目的はEPO産生細胞を作製することであるので、どの幹細胞を使用するのがより効果的なのかを考えて研究を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた状況としては、iPS細胞やiXEN細胞等の幹細胞の大量培養やEPO産生細胞の作製に必要となる培養用プラスチック製品や、各種のサイトカイン、シグナル活性化因子や阻害因子などの低分子化合物を用いた研究がまだおこなわれなかったことが要因の一つである。これらの試薬は非常に高価であるため、次年度にはこれらの試薬を購入するとともに、EPO分化の確認に必要な抗体も購入する予定である。さらに次年度は、得られた研究結果から学会発表や論文発表も予定しておりこれらの予算も必要となる。
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