研究課題/領域番号 |
18K19274
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
稲葉 俊夫 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 客員教授 (00137241)
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研究分担者 |
杉浦 喜久弥 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (30171143)
鳩谷 晋吾 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (40453138)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 再生医療 / 統合動物科学 / Muse細胞 / 幹細胞 / トランスレーショナルリサーチ |
研究実績の概要 |
本研究は、2010年にヒト体内に存在する腫瘍化の危険性が極めて低い新規の多能性幹細胞としてMultilineage-differentiating stress enduring cell(Muse細胞)の発見をもとに、ヒトと共通の生活習慣病などが自然発症するイヌのモデルを使い、未だ報告の見当たらないイヌの脂肪からMuse細胞の分離・同定、および本細胞を用いた再生治療の有効性と安全性を確認することにより、獣医領域における新しい研究分野の再生医療を推し進めるとともに、ヒト再生医療の実現を早めることを目的としている。本研究年度では、イヌMuse細胞の分離およびイヌMuse細胞の細胞生物学的諸性質について検討し、以下の結果を得た。 1.イヌMuse細胞の最適な分離条件を設定するため、脂肪組織由来間葉系幹細胞(ADSC)におけるトリプシンの暴露時間を長くし、さらに物理的刺激を加えることによってADSCから約10%の本細胞を得た。 2.トリプシンによる細胞への影響を確認するために核型解析を行ったところ、2n=78 (XX雌型)の正常染色体を示した。また造腫瘍性と関連のあるテロメアーゼ活性はADCSのそれと同様な低値を示した。 3.本細胞は、未分化細胞の特徴であるSSEA-3およびNANOGだけではなく、SOX2やOct3/4ならびにTRA-1-60についても免疫染色法にて陽性であった。 4.ヒト間葉系幹細胞の分化能力を評価するマーカーとして知られるα2-6シアル酸結合性レクチンを用いて本細胞の分化能力を検証したところ、ADSCのそれよりも高値を示した。5.遊走性因子として知られるS1PやSDF-1βに対して、本細胞の遊走能力は、ADSCのそれと比較して濃度依存的に高値を示した。さらに遊走関連レセプターであるS1PR2やCXCR-4の遺伝子発現量についてPCR法を用いて調べたところ、本細胞はADSCのそれと比べて高値を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度に予定していた研究計画の①イヌMuse細胞の分離②イヌMuse細胞の細胞生物学的諸性質の解析、ならびに③ADSCとの能力比較試験、を概ね達成できたため。
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今後の研究の推進方策 |
本細胞を用いて今年度に引き続き次年度には、以下の3項目について研究を推進する。 1.末梢血単核球との共培養により、T細胞の増減割合をフローサイトメトリー法によって解析することによりイヌMuse細胞の免疫調節能を調べる。 2.獣医領域では幹細胞製品は医薬品と同じ扱いで、まだ製品として承認されたものはないことから、細胞製剤は院内にて調整する必要があるために、培養に不慣れな獣医師でも安全で平易に培養可能であり、また高品質な細胞培養ができるような簡易型イヌMuse細胞培養キットを作製する。 3.簡易型イヌMuse細胞培養キットを作製し、炎症性腸疾患や慢性腎臓病など難治性疾患に対する臨床研究を推し進め、安全性評価を行う。
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