研究課題/領域番号 |
18K19275
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
堀江 恭二 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30333446)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 全能性 / 幹細胞 / ES細胞 / iPS細胞 / 再生医学 |
研究実績の概要 |
幹細胞培養法の樹立は、基礎医学、再生医学の発展に寄与してきた。既に、ES細胞、生殖幹細胞、神経幹細胞など、様々な幹細胞が樹立され、幹細胞状態の理解や再生医療への応用に貢献してきた。しかし、全ての細胞系譜の上位に位置する「全能性幹細胞」は、未だ樹立されていない。全能性状態では、前世代のエピジェネティックなゲノム情報が初期化されるとともに、個体発生の全プログラムが準備状態にある。このような性質は、他の細胞系譜には無い唯一無二のものであり、その解析は新たな学術的分野の開拓に繋がると期待される。全能性状態を規定する分子機構の解明は、ES/iPS細胞の包括的な理解へも重要な視点を与えるであろう。さらに、再生医学における様々な組織細胞の分化誘導においても、これまでのES/iPS細胞以上の能力を備える可能性も期待できる。そこで本研究では、我々が独自に開発した長期1細胞追跡法と、我々がこれまで取得してきた網羅的遺伝子発現データをもとに、全能性幹細胞の樹立を目指す。 本年度は、過去に論文報告されている全能性マーカー遺伝子のプロモーター直下に蛍光蛋白を連結したトランスポゾンベクタ ーを構築し、マウスES細胞ゲノムへ挿入した。このマーカー遺伝子は、ES細胞の長期培養中に一過性に発現が亢進し、その状態が全能性状態に近いことが報告されている。また、ES細胞を生きたまま追跡するために、異なる蛍光蛋白の発現ベクターも導入して、細胞の核を恒常的に検出できるようにした。 上記の2つのベクターを導入したES細胞において、2色の蛍光を、細胞が生きた状態で、蛍光顕微鏡下で継時的に記録することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のように、ES細胞の全能性状態を観察することはできたが、その一方で、全能性マーカー遺伝子のプロモーター制御下にある蛍光蛋白の発現亢進時に、細胞死を頻繁に認めた。これは、想定外のことであり、全能性状態の長期計測が容易ではないことが判明した。このため、全能性状態の評価方法を再検討する必要性が出ており、当初計画からの遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
蛍光蛋白の急激な発現亢進時の細胞死を回避するために、他の全能性マーカー遺伝子のプロモーターを用いて、蛍光蛋白の全体的な発現量を低く抑える。この全能性マーカーの選定に際しては、既存の論文報告に加えて、我々が独自に行ってきたRNA-seqのデータも参考にする。細胞死を回避した実験条件を樹立したのちは、全能性状態を持続的に高める培養条件をスクリーニングする。
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次年度使用額が生じた理由 |
全能性を反映するレポーター蛍光蛋白の急激な発現上昇に伴い、マウスES細胞に対する想定外の毒性を観察した。このため、ES細胞への毒性が生じない実験条件を再検討する必要が生じ、当初計画の実験が延期された。
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