研究課題/領域番号 |
18K19280
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
水野 健作 東北大学, 生命科学研究科, 名誉教授 (70128396)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 細胞骨格 / メカニカルストレス / アクチン / Rho / Rho-GEF |
研究実績の概要 |
細胞の力覚応答は組織形成や恒常性維持に重要な役割を担っている。RhoAによるアクチン再構築は細胞の力覚応答に必須であるが、力学的刺激によるRhoAの活性化機構は不明である。私達は、力覚応答に関わるRhoA-GEFとしてSoloを同定し、Soloが張力刺激によるRhoAの活性化とストレスファイバーの形成に必須であることを見出した。さらに、張力刺激依存的なSoloの活性化はケラチン繊維の変形に伴うSoloの立体構造変化によるというモデルを提出した。本研究では、Soloの力覚応答における役割と活性化の分子機構を解明することを目的として研究を行い、今年度は以下の結果を得た。 1)Soloがb4-インテグリンと結合し、ヘミデスモソームの形成と、上皮細胞の腺房の形成に関与することを明らかにした(Fujiwaraら, 2018)。 2)Soloとケラチン8/18繊維が上皮細胞の管腔構造の形態を長軸方向に引き延ばす機能を持つことを明らかにした(Nishimuraら, 2018)。 3)Soloとケラチン繊維の結合に関わるSoloのN末端領域のアミノ酸残基を同定し、これらのアミノ酸の変異によって、張力刺激依存的なストレスファイバーの形成や、基底面へのSoloの集積が抑制されることを見出し、Soloとケラチン繊維の結合が、Soloの力覚応答機能において重要であることを明らかにした(Fujiwaraら, 2019)。 4)Soloの分子伸長によってGEF活性が変化するかを調べるための実験系を検討した。SoloのN末端にHaloタグを、C末端にGSTタグを付け、Sf21細胞に発現させた。これをシリコーン膜に固相化し、シリコーン膜を伸展して、RhoAへの32P-GTPの取り込みによりSoloのRhoA-GEF活性を測定する系を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Soloの分子伸長の実験系を構築し、分子の伸長によるGEF活性の変化を測定する系を作成した。これまでGEF活性の有意な変化は認められていないが、シリコーン膜にSoloが充分量固相化されていないことが原因であると考えられる。この点については改良の可能性があるので、当初の目的であるSoloの活性化機構の解明に近づいていると考えられる。また、Soloの力覚応答機能については、ケラチン結合に関わるアミノ酸残基を同定し、Soloの機能発現におけるケラチンとの結合の重要性を示すことができた。これらのことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1)これまでに構築した分子伸長の実験系を改良し、Soloを大量に固相化できる系を確立し、張力刺激依存的なSoloの活性化はSoloの立体構造変化によるというモデルを検証する。 2)細胞の力覚応答におけるSoloの機能を解明するため、集団的細胞移動や気質の硬さ依存的な細胞接着、細胞移動、細胞分化におけるSoloの機能を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、張力刺激によるSoloの活性化を測定するための実験系の確立を目的に研究を行なったが、これらの実験は概ね既存の材料や設備で行うことができた。次年度は、この実験系を改良しSoloの活性変化を測定するため、大量のSoloタンパク質を得る必要があり、物品費が多くかかると思われることから、次年度使用額が生じた。 次年度はSoloタンパク質を大量に産生し、その張力依存的なRho-GEF活性を測定することを予定しており、生化学実験に必要な試薬を多く使用するため、物品費として使用する計画である。
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