研究課題/領域番号 |
18K19283
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
塩見 美喜子 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (20322745)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | C.inopinata / RNAサイレンシング |
研究実績の概要 |
トランスポゾンは生物進化を助長する一方、 その転移活性はゲノム損傷ひいては不妊を引き起こす。よって、真核生物はArgonaute を中核因子とするRNAサイレンシング機構を駆使してトランスポゾンを抑制する。最近、新たに石垣島で発見された線虫C. inopinataは、比較ゲノミクスからC. elegansの極近縁種であると認定されたが、両者の形態・生態・生殖様式は大きく異なり、核ゲノム中のトランスポゾンの含有量も非常に高い。このことから、C. inopinata はより効果的なRNAサイレンシング機構を進化上獲得したと予測される。Argonaute遺伝子を比較したところRNAサイレンシング機構そのものが両線虫において大きく異なる可能性が示唆された。そこで、本研究においては、 C. inopinata の、特に重要と判断したArgonauteに対するモノクローナル抗体を作製し、Argonauteに結合する小分子RNAのトランスクリプトーム解析とインターラクトーム解析に挑戦する。C. inopinataにおけるRNAサイレンシング機構を理解し、C. elegansのそれと比較することによってRNAサイレンシング機構の普遍性と多様性を明らかにする。現在、5種類のArgonaute抗体作製に取り組んでいる。2種類のArgonauteタンパク質に対するモノクローナル抗体はすでに作製済みである。そのうちの一つはC. elegansにはない、C. inopinata特有のArgonauteでありこの抗体作製は意義が高い。今後はこれを用いた生化学的解析を早急に進める。ポリクローナル抗体が取得できているものに関してはモノクロ化を進める。ALG-3/4ホモログおよびPRG-1ホモログ抗体は作製中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、5種類のArgonaute抗体作製に取り組んでいる。Sp34_5009890、Sp34_1024441に対するモノクローナル抗体はすでに作製済みである。Sp34_5009890はC. inopinata特有のArgonauteである可能性が高く、よってこの抗体作製は意義が高い。今後、これを用いた生化学的解析を進める。Sp34_1025930はSp34_5009890と系統的に近いため、これに対する抗体も作成中であるが、polyclonalであるためこのモノクロ化を進めている。C. inopinataではERGO-1がなく、ALG-3/4がその代替として機能している可能性が高い。よってALG-3/4ホモログSp34_3020440の抗体の作製、およびPRG-1に相当するSp34_5009890の抗体も作製中である。
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今後の研究の推進方策 |
5種類のArgonaute抗体作製を終了する。その後は、生化学的解析を進める。まずは、それぞれのArgonauteの局在を調べる。その後、C. inopinataより複合体の単離精製を進め、それぞれのArgonauteに結合するsmall RNAの配列を決定する。また、各Argonauteに特異的に結合する因子の同定を進める。
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