トランスポゾンは生物進化を助長する一方、その転移活性はゲノム損傷ひいては不妊を引き起こす。よって、真核生物はArgonaute を中核因子とするRNAサイレンシング機構を駆使してトランスポゾンを抑制する。石垣島で新たに発見された線虫C. inopinataは、比較ゲノミクスからC. elegansの極近縁種であると認定されたが、両者の形態・生態・生殖様式は大きく異なり、核ゲノム中のトランスポゾンの含有量も非常に高い。このことからC. inopinata は特殊なRNAサイレンシング機構を進化上獲得したと予測される。Argonaute遺伝子を比較したところやはりRNAサイレンシング機構そのものが両線虫において大きく異なる可能性が示唆された。本研究課題では、C. inopinataのArgonauteに対するモノクローナル抗体を作製し、Argonauteに結合する小分子RNAのトランスクリプトーム解析及びArgonauteのインターラクトーム解析に挑戦することにした。5種類のArgonaute抗体作製に取り組み、2種類のArgonauteタンパク質抗体はすでに作製済みである。これら抗体を用いた生化学的解析を進めたが、免疫沈降の条件検討に時間を要しており、まだ良好な結果の取得までには至っていない。Argonauteの生体内局在解析も進めたが、結論には至っていない。さらなる条件検討が必要であるため、今後それを進める。免疫沈降の条件が決定されたあかつきにはそれぞれのArgonauteに結合する小分子RNAのトランスクリプトーム解析を行うと同時に、それら生合成に関する情報を収集する。例えばC. ElegansのpiRNAはその他の生物と色々な点において相同性が低く、C. Inopinata のpiRNAの在り方を理解することは非常に興味深い。
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