研究課題/領域番号 |
18K19291
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小林 剛 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (40402565)
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研究分担者 |
曽我部 正博 名古屋大学, 医学系研究科, 特任教授 (10093428)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / 機械刺激 / メカノセンサー / 細胞骨格 |
研究実績の概要 |
メカニカルストレスは細胞の増殖・分化を制御する重要な因子であり、生体の恒常性の維持や器官形成において大きな役割を担っている。細胞のメカニカルストレス感知のセンサーとして機械刺激受容チャネルや接着斑関連分子が精力的に研究されてきたがまだ不明な点が多い。一方、ミトコンドリアは多くの細胞でメカニカルストレス負荷に応じて細胞内シグナルを誘導するが間接的なもので、センサーとは考えられていなかった。しかし、メカニカルストレスが細胞内骨格を介してミトコンドリアに伝わり、ミトコンドリアがそのストレスを直接感じる可能性がある。そこで、光ピンセットによる直接的なメカニカルストレス負荷や、生細胞中でミトコンドリアに掛かる力と化学的シグナルとの同時測定などの解析により「ミトコンドリアが、直接的にメカノストレスを化学的シグナルに変換するメカノセンサーとして機能する」という仮説を立て、検証を目指す。今年度は、培養細胞を用いた解析により、ミトコンドリア・シグナル、特に、ミトコンドリア内カルシウム濃度変化がメカニカルストレス負荷に誘導されることを確認し、また、それらの変化が細胞骨格や、ERのカルシウム濃度と密接に関連し変動していることを見出だした。また、そのミトコンドリア内カルシウム濃度上昇には、ミトコンドリア内膜上のミトコンドリアユニポーターが関与していることを明らかにした。さらに、ミトコンドリアがメカニカルストレスを直接的に感知する可能性を調べるために、ミトコンドリアと細胞骨格との間の張力を測定し、ミトコンドリア・シグナル誘導との相関の解析に取り組んだ。今年度は、その張力を測定するためにアダプター分子の構造をもとにした張力FRETセンサーを用い、その張力とミトコンドリア内カルシウム濃度変化に相関性があることを示す予備的な結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ順調に解析を進め、作業仮説を支持する結果を得ている。また、研究計画の他の予定項目も着実に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、メカニカルストレス依存的なミトコンドリア内カルシウム濃度の変化がどのような生理的な意義を持つのか?その解明を目指す。具体的には、①ミトコンドリア内のATP濃度をイメージング解析し、メカニカルストレスに依存してミトコンドリア内のATP産生能が変化しているかどうか、検討する。②また、ミトコンドリア内カルシウム濃度変化の分子機構をより深く理解するために、ミトコンドリアとERの相互作用とERからミトコンドリアへのカルシウム移行を解析する。また、③ミトコンドリアがメカニカルストレスを直接的に感知する、すなわち、メカノセンサーとして機能している可能性を調べるために、ミトコンドリアと細胞骨格との間の張力を測定し、ミトコンドリア・シグナル誘導との相関を調べる。これまで、アダプター分子の構造をもとにした張力FRETセンサーを用いてきたが、発現調節や局在操作に問題があり、克服できていない。2019年度は、本来のミトコンドリア機能/動態を阻害しない、張力測定用FRETプローブの新規開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
張力センサー用のベクター設計に時間を要し、その構築のための費用を次年度に繰り越した。次年度に入り直ちに使用する予定である。
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