メカニカルストレスは細胞の増殖・分化を制御する重要な因子であり、生体の恒常性の維持や器官形成において大きな役割を担っている。細胞のメカニカルストレス感知のセンサーとして機械刺激受容チャネルや接着斑関連分子が精力的に研究されてきたがまだ不明な点が多い。一方、ミトコンドリアは多くの細胞でメカニカルストレス負荷に応じて細胞内シグナルを誘導するが間接的なもので、センサーとは考えられていなかった。しかし、メカニカルストレスが細胞内骨格を介してミトコンドリアに伝わり、ミトコンドリアがそのストレスを直接感じる可能性がある。そこで、光ピンセットによる直接的なメカニカルストレス負荷や、生細胞中でミトコンドリアに掛かる力と化学的シグナルとの同時測定などの解析により「ミトコンドリアが、直接的にメカノストレスを化学的シグナルに変換するメカノセンサーとして機能する」という仮説を立て、検証を目指す。 最終年度では、①機械刺激受容チャネルなどの既知のメカノセンサーや、メカニカルストレス依存的な活性酸素産生やSrcキナーゼ活性化を抑制した条件においても、メカニカルストレスによりミトコンドリア内カルシウム濃度変化が誘導されることを見出した。従って、ミトコンドリア複合体がメカノセンサーとして働いている可能性が示唆された。②ミトコンドリアとERの相互作用の阻害やユニポーター発現の抑制により、メカニカルストレス負荷に対する応答が抑えられたことから、ERとミトコンドリアの相互作用が変化し、ミトコンドリア・ユニポーターからのカルシウム流入量がメカニカルストレス依存的に制御されていると考えられる。③ミトコンドリアとERの近接部位をライブイメージング解析し、その動態やメカニカルストレス負荷に対する応答を解析した。
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