研究実績の概要 |
本研究は、ナノダイヤモンド粒子を分子標識プローブとして用いて、光検出磁気共鳴法(ODMR)により量子センシングをする手法を開発する事を目的とした。それにより、細胞内の粘性、温度、pHなどの物性を10ナノメーターオーダーの空間分解能で計測し、細胞内の膜なしオルガネラ等の生成箇所(空間分布)と生成過程を明らかにする。2020年度は、微小ダイアモンド内の窒素空腔センター(NVC)をさまざまな物性パラメータの量子センサーとして計測する手法の開発として、以下の成果をあげた。 まず、NVCの光三重項電子を用いた室温における超偏極技術を確立した(Mag Res, 2021)。単分散の5ナノメートル極微小ナノダイヤモンドを利用した量子センサーを開発(ACS Nano, 2019)。加えて、ナノダイヤモンドの生体適合性向上のためのワンポット合成法を開発し、細胞内温度計測を行った(Bioconj Chem, 2018)。さらに、ナノダイヤモンドの表面官能基の改質、特にヒドロキシ化によるNVCのODMRコントラストの増強を達成した( Sci Rep, 2018)。 細胞内のセンシングに向けて、ナノダイヤモンドの細胞内送達技術を開発した(BBA, 2019)。また、ナノダイヤモンドを用いたT1強調イメージング技術を開発し、ナノ微小空間のpHの可視化を実現した(Chemosensors, 2020)。さらに、物性パラメータの計測に向けては、ナノダイヤモンドを用いたpHセンサーの開発および実証(ACS nano, 2019)を行なった。加えて、プローブの動態計測として、ナノダイヤモンドを用いた三次元ナノ回転運動トラッキング技術を開発し、これを活用した1分子構造変化の3次元検出、細胞粘弾性計測などを実証した(JACS, 2020)。
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