研究課題/領域番号 |
18K19298
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高木 淳一 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (90212000)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | アデノ随伴ウイルス / 環状ペプチド / ターゲッティング / 遺伝子治療 |
研究実績の概要 |
(項目1)PAタグを利用した、AAVキャプシドへのペプチド挿入デザインの評価と最適化: AAVのVP3キャプシド結晶構造をもとに、内部配列のうちキャプシド表面に突出したループを構成する領域を4カ所同定し、ここにPAタグ配列を挿入したAAVベクターをAAVpro Helper Free System(タカラバイオ)を用いて作製した。それらが細胞内で野生型同様に正しく粒子としてパッケージングされることを、リアルタイムPCRで確認した。 (項目2)ペプチド挿入型AAVベクターによる細胞感染の評価:発現カセットにGFP遺伝子を組み込んだpAAV-EGFPを自作し、これをpRCプラスミドとともにもちいて改変型AAV粒子を調製した。HEK細胞に感染させ、GFPの発現をモニターしたところ、4つの挿入変異体ごとに粒子形成能に与える影響がことなることがわかった。また、野生型のpRCプラスミドと共発現することでキメラウイルスを作製したところ、100%変異型では粒子形成ができない場合もウイルスが得られることがわかった。 (項目3)AAV感染成立に必要な第2の相互作用部位の解明:AAV受容体であるAAVR(KIAA0319L)の組み換え可溶性タンパク質を作製し、精製タンパク質を得た。また、AAV2由来のVP3キャプシドタンパク質を抗原としたモノクローナル抗体を作製し、ネイティブのウイルスを高親和性で認識する抗体を9クローン樹立した。 (項目4)PAタグ以外のターゲッティング用ヘアピンターンペプチドへの応用: AAVキャプシド上にPAペプチド以外の配列、具体的にはMAPタグペプチドおよびヒトプレキシンB1結合性ペプチドmP6-9を挿入した変異ウイルスを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
項目1については実験系の構築を終了し、変異ウイルスとその遺伝子導入試験に必要なすべてのベクターをそろえることができた。また、4カ所の挿入候補部位の同定に成功した。項目2については、粒子形成を阻害する多くの変異体について、キメラ法によるウイルス発現方法を確立した。項目3についてはAAVRタンパク質の作製とAAVとの相互作用試験の構築を終え、さらに結合部位探索のための抗AAV2モノクローナル抗体の樹立も達成した。項目4はPAタグ以外のペプチド配列挿入を開始し、MAPタグ配列とmP6-9配列挿入体は完成させた。以上のことから、「当初の計画以上の進展」と自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
項目1については目的を達成したので本年度で終了とする。項目2については評価系は確立したが、GFP発現では定量性に問題があるので、今後のことを考慮してルシフェラーゼ発現ベクターに切り替えることを計画している。項目3について、まずはAAV2抗体のなかでAAVR結合を阻害するものがないか探索し、それが得られればそのエピトープを決定する。項目4についてはさらに異なるターゲッティングペプチドの挿入を行い、最終的には標的タンパク質を介した細胞への特異的感染成立を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定の240万円のうち20%ほどの使用にとどまったが、消耗品等としてはすでに経常経費で購入済みであった物品を充てたので研究遂行に支障はなかった。年度後半より、GFPではなくルシフェラーゼによる遺伝子導入能の定量評価が必要であることが明らかとなったため、発光専用のプレートリーダー購入を検討始めたが、年度内に決定できなかったため持ち越した。2019年度初めには同機が納入される予定であり、持ち越し学はほぼこれに充当される。
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