研究課題
分裂酵母細胞核内にあるクロマチン構造の電子顕微鏡像を観測するために,ヒストンH2B-APEX融合タンパク質を発現する細胞株を構築した.H2B-APEX融合タンパク質を発現する酵母細胞に対して,化学固定,細胞壁破壊,diaminobenzidine(DAB)の細胞内導入,H2O2添加による細胞内DAB-重合反応の各ステップを最適化した.特にDABを細胞内に導入する過程では,DABに対するカウンターイオンを替えることにより,これまでの倍量のDABを細胞内に導入することが可能になった.この結果,これまでのサンプルよりも,約2倍のコントラストをもつクロマチン電子顕微鏡像の観測が可能になった.細胞内構造を化学固定するための,細胞内化学架橋反応条件の最適化も進めた.導電染色する前段階では,細胞構造をインタクトの状態に保持するために化学固定する.しかし,化学固定の過程では核内構造に歪みが生じることがあるために,核内構造ダメージが最も少ない条件で細胞内構造を固定する条件の検討が必要であった.急速凍結して脱水する方法(物理固定),急速凍結してから徐々に化学固定する方法(cryo-fixation)を試みた.最終的に,反応条件を最適化することでcryo-fixationにより細胞内構造の歪みの少ない最適なサンプル調製に成功した.今期の研究により,FIB-SEMによる3次元電子顕微鏡観測に十分なコントラストを与える核内クロマチンの導電染色法を構築した.2年目の研究では,FIB-SEMによる3次元電子顕微鏡像観測に研究を進め,核内クロマチン構造の細胞ごとの違いを観測する.
1: 当初の計画以上に進展している
細胞内構造の歪みを最小限に抑える細胞固定化技術,高コントラストのクロマチン電子顕微鏡像を得るための導電染色技術の2つの技術の確立が,研究を進める上での最も大きな懸案であった.当初期待していたよりも,良い状態のサンプル調製が実現できた.
今期で確立した試料調製技術を用いて,複数の分裂酵母細胞を用いてFIB-SEM像を取得する.細胞毎に異なるクロマチン構造の変化を電子顕微鏡像として観測する.同時に,既に構築しているクロマチン構造・動態モデルを用いて,FIB-SEM電子顕微鏡像からクロマチンの3次元立体像の再構築を試みる.
核内クロマチンの導電染色技術の構築が計画よりも少ない試行錯誤で完了したため,遺伝子操作試薬や酵母細胞培養のための試薬代が計画よりも少なくなった.初年度残額分の予算は,2年目のFIB-SEM使用料に充てることで,より多くのクロマチン電子顕微鏡像を集積する.
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