APEX2を融合したH2Bを発現する分裂酵母細胞を用いて,核内クロマチンの3次元電子顕微鏡像の観測に成功した.これまでに核内クロマチンの3次元像をナノスケールで捉えた例はなく,今回の萌芽研究で初めて達成できた成果である. 分裂酵母の細胞固定方の最適化,diamino-benzidine (DAB)の細胞内導入方法の最適化,細胞内でのDAB重合反応の最適化など,数々の問題を克服する必要があったが,一つ一つのステップを最適化するために実験を繰り返し最終的にFIB-SEMによる核内クロマチン構造の3次元電子顕微鏡像の観測に成功した. 得られた3次元電子顕微鏡像からクロマチン立体構造モデルを構築するためには,粗視化クロマチン構造モデルを電子顕微鏡像に当てはめることが必要になる.クロマチン構造動態モデルの高精度化も今期の研究で行った. 構造遺伝子座特異的に蛍光標識した高分解能共焦点顕微鏡像と電子顕微鏡像の重ね合わせによる,電子顕微鏡像上のでの特定の遺伝子座の位置を特定する技術(CLEM)の導入が必要である.しかし,電子顕微鏡試料として脱水した段階では蛍光標識(GFP)が機能しないために,CLEM計測については,化学的な蛍光標識の導入など,さらなる試料調製条件の検討が必要である. FIB-SEM像から3次元電子顕微鏡像を構築する過程は,人手を介さずに自動化することに成功した.この結果,複数の核内クロマチン構造の相互比較が可能となった.
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