研究課題/領域番号 |
18K19308
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
鳥越 秀峰 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 教授 (80227678)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | シャペロン介在性オートファジー / 翻訳後修飾 / SUMO化 / 癌抑制蛋白質p53 / p53抑制蛋白質MDM2 |
研究実績の概要 |
癌原遺伝子産物Skiは癌細胞で過剰発現する。Skiは、翻訳後修飾SUMO化に関与する酵素Ubc9に結合し、Ubc9のSUMO化活性を増加する。これにより、癌抑制蛋白質p53を分解へ導くMDM2の、Ubc9によるSUMO化が増加する。SUMO化MDM2は、自己をユビキチン化して分解に導く活性が減少し、MDM2の細胞内濃度が増加する。SUMO化MDM2は、p53をユビキチン化して分解に導く活性は変わらないため、増加したSUMO化MDM2は、p53のユビキチン化による分解を促進する。最終的に、癌抑制蛋白質p53の細胞内濃度が減少し、癌化が進行する。本研究では、シャペロン介在性オートファジー(CMA)を利用して、正常MDM2やユビキチン化MDM2を分解せず、SUMO化MDM2のみを特異的に細胞内で分解し、癌抑制蛋白質p53の細胞内濃度を増加させ、癌化進行を抑制する手法を開発することを目指した。CMAに関与するHsc70が特異的に結合する配列(Hsc70bm)と、SUMO化MDM2が特異的に結合するSENP2の配列の融合蛋白質発現用プラスミドを構築し、細胞に導入した。また、CMAに関与するHsc70やLamp-2Aの強制発現用プラスミドも構築し、細胞に導入した。正常MDM2の発現量が顕著に変化せず、SUMO化MDM2の発現量が減少した。一方、Hsc70bm配列を有しないSENP2のみの配列の強制発現用プラスミドを構築し、Hsc70やLamp-2Aの強制発現用プラスミドと共に、細胞に導入した。正常MDM2もSUMO化MDM2も発現量は顕著に変化しなかった。これより、上記のSUMO化MDM2の発現量の減少はシャペロン介在性オートファジーで進行すると推定された。また、SUMO化MDM2の発現量が減少した時に、p53の発現量は減少しないように見受けられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Hsc70bmとSENP2の融合蛋白質発現用プラスミドや、Hsc70やLamp-2Aの強制発現用プラスミドを細胞に導入することにより、2018年度の研究目的である、SUMO化MDM2のみを特異的に分解することができたから。SUMO化MDM2の発現量が減少した時に、p53の発現量は減少しないように見受けられたから。
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今後の研究の推進方策 |
Hsc70bmとSENP2の融合蛋白質発現用プラスミドを、大腸癌モデルマウスの腫瘍に投与した場合の、正常MDM2とSUMO化MDM2の発現量を経時的に免疫染色で解析する。このプラスミドの導入により、正常MDM2の発現量は変化せず、SUMO化MDM2のみが特異的に分解され、発現量が減少するかを解析する。また、SUMO化MDM2の分解に伴い、MDM2によるp53の分解が抑制され、癌抑制蛋白質p53が増加するかを免疫染色で経時的に解析する。また、SUMO化MDM2の分解に伴い、癌抑制蛋白質p53が増加し、癌抑制効果が促進され、腫瘍の体積が減少するかを経時的に解析し、本研究で開発した新規手法による制癌効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の使用額がわずかに少なくて済んだため。2019年度分として請求した助成金と合わせて、効率的に使用する。
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