研究課題
癌原遺伝子産物Skiは癌細胞で過剰発現する。Skiは、翻訳後修飾SUMO化に関与する酵素Ubc9に結合し、Ubc9のSUMO化活性を増加する。これにより、癌抑制蛋白質p53を分解へ導くMDM2の、Ubc9によるSUMO化が増加する。SUMO化MDM2は、自己をユビキチン化して分解に導く活性が減少し、MDM2の細胞内濃度が増加する。SUMO化MDM2は、p53をユビキチン化して分解に導く活性は変わらないため、増加したSUMO化MDM2は、p53のユビキチン化による分解を促進する。最終的に、癌抑制蛋白質p53の細胞内濃度が減少し、癌化が進行する。本研究では、シャペロン介在性オートファジー(CMA)を利用して、正常MDM2やユビキチン化MDM2を分解せず、SUMO化MDM2のみを特異的に細胞内で分解し、癌抑制蛋白質p53の細胞内濃度を増加させ、癌化進行を抑制する手法を開発することを目指した。CMAに関与するHsc70が特異的に結合する配列(Hsc70bm)と、SUMO化MDM2が特異的に結合するSENP2の配列の融合蛋白質発現用プラスミドを構築し、マウスの腫瘍に局所投与した。また、CMAに関与するHsc70やLamp-2Aの強制発現用プラスミドも構築し、マウスの腫瘍に局所投与に導入した。正常MDM2の発現量が顕著に変化せず、SUMO化MDM2の発現量はわずかに減少したように見えた。一方、Hsc70bm配列を有しないSENP2のみの配列の強制発現用プラスミドを構築し、Hsc70やLamp-2Aの強制発現用プラスミドと共に、マウスの腫瘍に局所投与導入した。正常MDM2もSUMO化MDM2も発現量は変化しなかった。また、SUMO化MDM2の発現量がわずかに減少した時に、p53の発現量は残念ながら減少したように見受けられた。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
ChembioChem
巻: 21 ページ: 517-522
10.1002/cbic.201900450
Sci.Rep.
巻: 10 ページ: 5388
10.1038/s41598-020-62292-5