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2018 年度 実施状況報告書

分化とがん化に関わるクロマチンドメイン遷移のメカニズム解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K19310
研究機関公益財団法人がん研究会

研究代表者

斉藤 典子  公益財団法人がん研究会, がん研究所 がん生物部, 部長 (40398235)

研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2021-03-31
キーワードノンコーディングRNA / クロマチンドメイン
研究実績の概要

適切な遺伝子の発現はあらゆる生命現象に重要である。従来、転写制御には、転写因子やDNAのメチル化など、ゲノムDNAをひも状に捉えた2次元での検証がさかんに行われてきた。近年、ゲノムの3次元構造が着目されるようになってきた。特にゲノムDNAが核内でTAD (トポロジカル相互作用ドメイン)と呼ばれるMb(メガベース)レベルの巨大ドメインを形成し、転写活性なTADが寄り集まるA-コンパートメント、不活性なTADが集まるB-コンパートメントに分類されるという新たな知見が蓄積しつつあり、その詳細解明が求められている。
また近年、ゲノム中の非タンパク質をコードしない領域から、種々の非コードRNAが転写され、核内で遺伝子の発現制御を行っていることが明らかになってきた。
乳がんで重要なエストロゲン受容体(ER)をコードするESR1遺伝子が乳がん再発過程で転写活性となる際に、ESR1遺伝子座を含む0.7 Mbの広いゲノム領域から一群の長鎖ノンコーディングRNAであるエレノアが生産される。エレノアは核内で自身の遺伝子座と近隣に相互作用して、そのクロマチン領域に限定された特徴的なヒストン修飾と、RNAクラウド(塊)を形成し、転写活性の場を作り上げる。
本研究ではこの0.7Mbのゲノム領域とクロマチンドメインの関係を明らかにする。また細胞の分化やがん化など、細胞状態が変遷に伴うクロマチンドメインの動態を明らかにし、エレノアそこにエレノアノンコーディングRNA関わるかを検証することを目的とする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ER陽性乳がんの内分泌療法抵抗性モデル系であるLTED細胞では、ノンコーディングRNA群であるエレノアRNAが高発現している。エレノアはエストロゲン受容体(ER)タンパク質をコードするESR1遺伝子およびその近傍の3遺伝子群を含む、およそ0.7 Mbのゲノム領域から転写される。本研究では、この領域がクロマチンドメインの一ユニットであるととらえ、既存の他のドメイン構造との関連を調べた。一般公開されているデータベースの解析により、エレノアで規定されるドメインが、近隣ゲノムどうしが相互作用することで形成されるドメインであるTAD (topologically associating domain) におおよそ相当することを明らかにした。このドメインは、ES細胞(幹細胞)では転写不活性なB-コンパートメントに、乳腺に分化した細胞(MCF10A)ではそこから逸脱し、乳がん細胞(MCF7)では転写活性なA-コンパートメントに遷移することを確認している。これらのことより、本研究はおおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

エレノアの転写で規定されるクロマチンドメインについて、今後、Hi-C解析を行って、より定量的に評価する。Hi-C解析は、核内での3次元DNA構造をゲノムワイドに解析する手法である。細胞核をホルマリンで固定したのち、制限酵素処理し、物理的に近隣にあるゲノムDNAどうしをリガーゼにより結合させる。その後、DNAを分離精製し、高速シーケンサーにより融合した遺伝子部位を同定する。これにより、近隣のゲノムどうしが集合するTAD構造が可視化され、TADの境界をしめすinsulator indexなどの数値を得ることができる。次年度では、TADとA-B-コンパートメントの変遷を定量的に示すために、異なる細胞株にけるHi-Cを可能とする。そのために実験の最適化をすすめる。また、従来どおりに研究がすすんだ場合、最終年度には、エレノアRNAを阻害して、これらのTADの形成および変遷がいかに影響をうけるかを明らかにする予定である。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2018 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 6件) 図書 (1件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [国際共同研究] Univ of Massachusetts Med Sch/Mindshare Medical Inc(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Univ of Massachusetts Med Sch/Mindshare Medical Inc
  • [雑誌論文] Ki-67 and condensins support the integrity of mitotic chromosomes through distinct mechanisms2018

    • 著者名/発表者名
      Takagi Masatoshi、Ono Takao、Natsume Toyoaki、Sakamoto Chiyomi、Nakao Mitsuyoshi、Saitoh Noriko、Kanemaki Masato T.、Hirano Tatsuya、Imamoto Naoko
    • 雑誌名

      Journal of Cell Science

      巻: 131 ページ: -

    • DOI

      10.1242/jcs.212092

    • 査読あり
  • [雑誌論文] An asymmetric centromeric nucleosome2018

    • 著者名/発表者名
      Ichikawa Yuichi、Saitoh Noriko、Kaufman Paul D
    • 雑誌名

      eLife

      巻: 7 ページ: -

    • DOI

      10.7554/eLife.37911

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Endocrine therapy-resistant breast cancer model cells are inhibited by soybean glyceollin I through Eleanor non-coding RNA2018

    • 著者名/発表者名
      Yamamoto Tatsuro、Sakamoto Chiyomi、Tachiwana Hiroaki、Kumabe Mitsuru、Matsui Toshiro、Yamashita Tadatoshi、Shinagawa Masatoshi、Ochiai Koji、Saitoh Noriko、Nakao Mitsuyoshi
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 8 ページ: 15202

    • DOI

      10.1038/s41598-018-33227-y

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Nuclear non-coding RNAs Eleanors, define the active ESR1 chromatin domain in breast cancer cells.2018

    • 著者名/発表者名
      Saitoh, N.
    • 学会等名
      Cold Spring Harbor Conferences Asia, RNA Biology.
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Saitoh, N. Chromatin regulation by nuclear non-coding RNA in breast cancer cells.2018

    • 著者名/発表者名
      Saitoh, N.
    • 学会等名
      HiHA 国際ワークショップ ?染色体動態、分配と機能の理解に向かって
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 乳がんの高次クロマチンドメインに関わるノンコーディングRNA.2018

    • 著者名/発表者名
      斉藤典子
    • 学会等名
      第41回日本分子生物学会年会
    • 招待講演
  • [学会発表] 乳がんに関わるノンコーディングRNAと細胞核内ゲノム構造.2018

    • 著者名/発表者名
      斉藤 典子
    • 学会等名
      千葉大学 第16回クロマチン代謝制御セミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] 再発乳がんの活性染色体ドメインに関わるエレノアノンコーディングRNA2018

    • 著者名/発表者名
      斉藤典子
    • 学会等名
      第2回富山RNAワークショップ
    • 招待講演
  • [学会発表] 乳がんと細胞核のかたち2018

    • 著者名/発表者名
      斉藤典子
    • 学会等名
      新学術領域「動的クロマチン構造と機能」一般公開シンポジウム 遺伝子研究の最前線
    • 招待講演
  • [図書] 「実験医学」増刊 第36巻第17号、平野達也・胡桃坂仁志 編 「染色体の新常識」2018

    • 著者名/発表者名
      野澤竜介、斉藤典子
    • 総ページ数
      p2941-2948
    • 出版者
      羊土社
    • ISBN
      -
  • [備考] がん研究所

    • URL

      https://www.jfcr.or.jp/laboratory/department/cancer_biology/index.html

  • [産業財産権] グリセオリンIの作用機序とその利用2018

    • 発明者名
      山本達郎、立和名博昭、斉藤典子、井出剛、落合孝次
    • 権利者名
      公益財団法人がん研究会、大豆エナジー株式会社
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2018-192177

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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