研究課題
適切な遺伝子の発現はあらゆる生命現象に重要である。真核生物のゲノムDNAは細胞核内で何層にもおりたたまれており、その様式が遺伝子のオン・オフに影響する。近年、ゲノムDNAは核内で、TAD (トポロジカル相互作用ドメイン)と呼ばれるMb単位の巨大ドメインを形成し、さらに、転写活性なTADが寄り集まるA-コンパートメント、不活性なTADが集まるB-コンパートメントに分類されることが示されてきているが、その重要性や機能の多くは不明である。エストロゲン受容体(ER)陽性乳がんに重要なESR1遺伝子座を含む0.7 Mbのゲノム領域は、がん化とともに、エレノアノンコーディングRNAで規定される“エレノアTAD”を形成し、さらにB-からA-コンパートメントに遷移する。本研究では、エレノアTADについて、その形成や特性の変遷機序について明らかにする。本研究は、従来の二次元的な遺伝子制御機序の発想に、3次元のゲノム構築と核内ノンコーディングRNAの重要性を組み込むもので、臨床研究への発展性も含む。本年度は、再発乳がんモデル細胞LTED細胞をエストロゲン様化合物であるレスベラトロールで処理してクロマチン高次構造を詳細に解析した。エレノアの阻害とともに、エレノアTAD内の転写は全て抑制されるものの、エレノアTAD自身は依然としてA-コンパートメントに属することを見出した。細胞が何代にもわたって時間を経て転写様式を変化させる分化やがん化過程と異なり、時間単位の環境変化では、A-からB-コンパートメントへといった大きなスケールの変遷は起きないことが明らかになった。逆に、Aコンパートメント内でも局所的に転写が抑制されるメカニズムがあることが明らかになった。クロマチンには多階層にわたる転写制御機序があることが明らかになった。
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