研究課題/領域番号 |
18K19318
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
小林 一也 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (50360110)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | プラナリア / 有性生殖 / 無性生殖 / 生殖様式転換 / 共生細菌 |
研究実績の概要 |
本研究は、共生細菌が扁形動物プラナリアの生殖様式転換(無性生殖から有性生殖への切り替え「有性化」)を制御しているという斬新な概念を提案するものである。先行研究により、プラナリアの無性化に働く共生細菌が存在し、その働きによる有性化抑制の仕組みが存在していることが予想できた。2018年度は、16S rRNA配列に注目したメタゲノム解析によってプラナリアの無性化に働く共生細菌を探索し候補細菌を絞り込む一方で、候補細菌の培養系を確立し、その16S rRNA配列を決定して、メタゲノム解析で絞られた候補細菌の配列と一致するかを確かめることで、無性化共生細菌を同定することを目指した。 その結果、16S rRNA配列の比較による細菌叢解析により、同種プラナリアであっても無性個体と有性個体に共生している細菌叢が有意に異なることを明らかにした。さらに、無性個体に有意に存在しているグラム陰性菌を3種絞り込んだ。当初の計画では、これらの候補細菌が目的の無性化共生細菌であるかを検証するために、培養系を確立する予定であったが、核酸ペプチド(PNA)を用いた細菌のノックダウン法が存在していることに気がついて、証明方法としてこの手法を行うことにした。このノックダウンの結果、細菌数が減少し、かつ有性化が起きた場合に候補細菌を無性化共生細菌と理論的に判定できる。その結果、3種の候補細菌のうち、1種が無性化共生細菌であると同定できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度の目標である無性化共生細菌を同定できたので、(2)おおむね順調に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、無性化共生細菌が合成していると予想される無性化因子を単離・同定することを目指す。そのためには、まずは無性化共生細菌の培養系を確立しなければならない。無性化共生細菌は、プラナリア無性個体に7-8割存在しているグラム陰性菌であることが16S rRNA配列情報からわかっている。そこで、まずは無性個体をホモジナイザーで懸濁した組織液に存在するグラム陰性菌だけが生き残れるように抗生物質を添加した寒天培地で培養する。無性化共生細菌が難培養性であることも考えられるので、市販の栄養培地や無性個体の抽出物などを添加することで培養方法を検討し、液体培地での培養と組み合わせて無性化共生細菌の培養系を確立する。培養系の確立後は、大量培養した無性化共生細菌抽出物をHPLCで分画して、プラナリアの無性化に働く活性をもつ化合物(無性化因子)を分離していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度に予定していた学会発表の準備が間に合わなかったので、2018年度に予算立てしていた旅費は2019年度に使用する。 2018年度に予定していたメタゲノム解析の一部が間に合わなかったので、それに伴い、それに必要な消耗品(物品費)と外部委託費を2019年度に繰り越すこととなった。
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