研究課題/領域番号 |
18K19323
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
神田 真司 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (50634284)
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研究分担者 |
安齋 賢 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (20779467)
馬谷 千恵 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (60779346)
兵藤 晋 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (40222244)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | QTL解析 / 野生 / 次世代シーケンサー |
研究実績の概要 |
本年度はシーケンスを行うサンプル調整のためのプロトコルの確立と実際のサンプル調整を行った。昨年度の表現型を解析した、野生系統(Kiyosu)と飼育系統(d-rR)のF2ハイブリッド個体に、更に産卵数に関するデータを集めたF2ハイブリッドを追加した。それらのゲノム抽出を行い、ddRAD Seq法のためのサンプルの調整を約350個体で行った。当初年度末のシーケンス外注を目指しており、遅延が生じたものの、分担体制の変更によってよってこれを解決した。現在、シーケンス待ちのサンプルが完成しており、最終的なクオリティーチェックの後にシーケンスおよび遺伝子座の解析を開始する。この間に、飼育系統の持つ多産の形質の同定のための別のアプローチとして、野生系統と飼育系統のハイブリッドと野生系統を掛け合わせ最も多産な個体を選抜し続ける新たな実験を開始した。本実験は10世代程度の交配を予定しており、F3ハイブリッドから選抜を開始して現在3世代の選抜が完了している。本研究の期限である3年目までには10世代の選抜する事はできないが、継続的に選抜を続けることにより長い視点での研究の礎としたいと考えている。次年度は作成した350個体のシーケンスサンプルをまず次世代シーケンサーによる解析を行う。そしてコンピューターによる解析により、昨年度に統計処理まで行っているストレス及び多産に関する表現型と相関を解析することにより、ストレスあるいは多産に関与する遺伝子座の同定を行う。この実験と並行して多産形質の選抜、継代も引き続き行って2つのアプローチからストレスあるいは多産に関する遺伝子の同定を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は前年度に作成した行動実験のデータに加えて、さらに個体数を追加し、産卵数等を数値化した。これによってこれまでに計画してきたストレス耐性などに関する野生及び飼育系統の遺伝的違いの検証に加え、産卵数などの形質に関しても検証可能となった。一方で前年度サンプル調整がうまくいかなかった件に関してはゲノム抽出などの方法を抜本的に変更することによって、電気泳動レベルでは少なくともクオリティーの高いゲノムの抽出をできるようになった。この先シーケンスを担当している研究分担者の異動などがあり研究進行に困難が生じた。そこで分担者が条件検討のみを行い、実際の作業は研究代表者が行うという作業体制の変更を行いこの問題を解決した。現在ddRAD Seq用のサンプルを調整済みである。早い段階でクオリティーチェック、および次世代シーケンサーによるシーケンスを行い、野生と飼育系統における表現型の差異と相関する遺伝子座を同定する所存である。 これに加えて、野生型と飼育系統を交配したF3ハイブリッドを作成し今後の実験に備えている。このF3ハイブリッドの中から10匹を選抜し最も多く卵を産む個体を選抜した。さらに野生個体のオスと交配し、再び最も卵を産む個体を選抜している。この操作を現在3世代繰り返している。長期的にこの実験を継続することによって、ゲノムのほとんどが野生系統由来であるのにもかかわらず、ごく一部が飼育系統によるものであるため、産卵しやすい性質を示す個体が作れると考えている。この個体を全ゲノムシーケンスすることによって上記の方法とは全く異なるアプローチで多産に関する遺伝子座を同定する所存である。 滞りが生じた部分はあったものの、サンプル数をふやせたこと、また、万が一の際のバックアップ計画として新たなの実験計画も加えることができた。当初の予定とは少々進捗の順序は異なっているものの、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに作成してあるシーケンスサンプルは350個体分にも及ぶ。そこでこのシーケンスサンプルのクオリティーチェックを、リアルタイムPCRと電気泳動によって行い、検証した後、シーケンス業者に外注する。すでにillumina社の次世代シーケンサー用のアダプターが付いており、クオリティーチェック後にすぐにシーケンスが可能な状態となっている。シーケンスが完了し次第、分担者のすでに立ち上げているQTLの解析プログラムを用いて各表現型と相関する遺伝子座の決定を行う。サンプルが正しく調整されていることを検証するために、表現型として明らかな体色に関するパラメーターも定量化している。体色に関する遺伝子と遺伝子座の相関が見られるかどうかを検証することで、サンプルおよび手法の妥当性も検証する予定である。ストレスや多産に関する形質と相関する遺伝子座が見つかり次第、その遺伝子座の各遺伝子発現の相違をリアルタイムPCR法などを用いて野生系統と飼育系統に関して解析する。相関が見られたものに関しては直ちにCRISPR法を用いた遺伝子ノックアウトを開始する。 野生型と飼育系統を交配したハイブリッドを複数世代野生系統と掛け合わせていく研究に関しては、継続して掛け合わせ、および多産個体の選抜を行っていく。10世代に達したところで全ゲノムシーケンスを行い、多産をもたらす遺伝子を同定する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次世代シーケンスの外注の計画がずれていること、それに伴う様々な試薬を使う実験計画が後ろ倒しになっていることによる。次年度は最終年度であるため、計画的に使用し、研究を遂行する。
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