研究課題/領域番号 |
18K19324
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山岸 雅彦 東京大学, 大学院総合文化研究科, 学術研究員 (30815501)
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研究分担者 |
矢島 潤一郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (00453499)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | アクチンフィラメント / ミオシン / アクチン結合タンパク質 / リポソーム |
研究実績の概要 |
動物細胞における細胞質分裂では、分裂装置・収縮環が、細胞骨格アクチンフィラメントやモータータンパク質ミオシンなどの相互作用を通して3次元空間に構築され、適切なタイミング・場所で、適切な機能を果たす必要がある。本研究では、収縮環に必須なタンパク質を人工膜に内包し、生体分子の持つ自律的かつ能動的な性質を利用して、「分裂する人工細胞モデル」を構成的アプローチにより構築することを試みる。本年度においては、主に以下の項目について研究を進めた。 1)アクチンフィラメントとミオシンをウサギの骨格筋から精製した。重合能や活性能を有していることを確認した。ミオシンが溶液中の塩濃度依存的にミオシンミニフィラメントを形成することを、光学顕微鏡および電子顕微鏡によって確認した。2)アクチン結合タンパク質であるアニリンを大腸菌及びヒト培養細胞内で発現させ、可溶化タンパク質を精製した。光学顕微鏡下で、アニリンがアクチンフィラメントに結合したり解離したりする様子を可視化し、解離定数を算出した。3)上述のアクチンフィラメントおよびアクチン結合タンパク質を用いて、高速AFMを使用し、アクチン結合タンパク質のアクチンフィラメントへの結合過程を可視化した。4)アクチンフィラメント、ミオシンミニフィラメントおよびアクチン結合タンパク質からなる不規則構造体を形成させ、構造体内の連結性およびATP濃度に依存した収縮モデルを確立した。不規則構造体の構成成分をオイルドロップレット内、およびリポソーム内に封入することにより、リング状構造体の形成条件を検討した。5)アクチン間の力を同定するために、既存の力FRETセンサーの改良を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画で掲げていた、収縮する人工細胞の確立のための条件検討が進み、さらに、その構成因子であるアクチン結合タンパク質の特性を定量することができ、人工収縮環で起こり得る収縮を制御する分子機構の一端を解明することにおいて予定通りの成果が得られ、論文の作成段階まで到達した。
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今後の研究の推進方策 |
残りの研究期間に以下の項目の研究を進める。①リポソーム内に膜結合成分を加えることで、再構成収縮環と膜との相互作用を創出し、リポソームの一部をくびれさせる。②力FRETセンサーによるリポソーム内での力分布の可視化を行う。③人工収縮環内の3次元力学測定を可能とする光学系を構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:開始時期が遅かったことに加え、アクチン結合タンパク質に含まれる不純物を除去することに想定以上に時間を要し、さらにタンパク質を可溶化させることにも時間を要した。また、論文の作成に想定以上に時間を要したため、計画通りの消耗品や物品の購入まで至らなかった。 計画:技術補佐員を雇用し、補佐員によって必要なタンパク質を精製し、サンプルの調整の効率化を行う。
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