研究課題/領域番号 |
18K19328
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
中田 隆夫 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (50218004)
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研究分担者 |
稲葉 弘哲 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (80791334)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 光遺伝学 / クライオ電子線トモグラフィ / RAC1 |
研究実績の概要 |
近年のクライオ電子線トモグラフィの技術の進展により細胞内のアクチン線維のネットワークの三次元観察が可能となってきている。葉状仮足は、Rhoファミリー低分子量Gタンパク質であるRac1により形成される枝分かれしたアクチンに富むシート状の突起であり、細胞運動や細胞分裂、癌の浸潤転移などにおいて機能するため、その先端のアクチン重合部位の構造を明らかにすることは細胞生物学的にも病理学的にも非常に重要である。本研究は光遺伝学の技術を用いて、青色光によって活性かするRAC1光スイッチによって葉状仮足形成を促し、急速凍結した細胞試料をクライオ電子線トモグラフィに供することで、葉状仮足形成におけるアクチンネットワークの経時変化を明らかにすることを目的としている。 初年度の研究により我々は2つの技術の融合、すなわち光遺伝学で細胞内分子を活性化した細胞をクライオ電子線トモグラフィで観察することに成功した。急速凍結には急速浸漬装置EM GP2 (Leica)を用い、クライオ電子顕微鏡は大阪大学微細構造解析プラットフォームのハイエンドクライオ電子顕微鏡Titan Krios (FEI)を利用し、-60°~60°程度の連続傾斜像を取得した。連続傾斜像からの三次元再構築はIMOD/ETomo(フリーソフト)を用いて行なった。幸い葉状仮足は非常に薄い構造のため、細胞の中で最も高い解像度を得ることができた。この結果、アクチンの1本1本の線維が見られるレベルの葉状仮足観察が可能になってきている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように青色光でRac1を活性化した細胞の葉状仮足におけるアクチン線維をクライオ電子線トモグラフィで観察することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
さらによい凍結試料を作製し、現時点での(位相板のない状態での)クライオ電子顕微鏡の限界を見極め、その画像でどれだけ短いアクチン線維を同定できるかを検討する。アクチンとArp2/3複合体をどこまで同定できるかについては、さらなる解析の工夫が必要と思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計上していた共焦点顕微鏡用レーザーランプ交換費用(オリンパス・FV1200用部品 170万円)はタイムラプス撮影の使用時間に応じて消耗するため、初年度に交換が必要と見込んでいた。しかし現時点で平均寿命時間を大幅に超えているが、まだ問題なく使用できているため次年度に交換を行うこととした。 当初より消費税や納入価格が上がることを想定し、次年度使用額は全額レーザーランプ交換費用に充てる計画である。
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