被子植物の光屈性は器官の光照射側と陰側の光刺激の差を植物ホルモン・オーキシンの濃度勾配に変換し、光照射側と陰側の細胞伸長差を誘導する反応と考えられているが、実際には未だその詳細な理解は得られていない。我々はオーキシン不均等勾配形成に依存しない未知の偏差成長機構を解明することを目的に本研究を行っている。オーキシン輸送体 PIN3 及び PIN7の二重変異体のエンハンサー突然変異体の原因遺伝子 PP2C を特定し、その機能解析を行った。2020年度、pp2c 二重変異体を用いたトランスクリプトーム解析を行い、PP2C遺伝子によるオーキシン関連遺伝子群の転写制御がないこと、実際にDR5:GFPオーキシンレポーター遺伝子の発現は野生型同様に不均等勾配を形成することを明らかにした。これらは同定した PP2C遺伝子がオーキシン不均等勾配形成以外の機能によって光屈性に働くことを示唆した。リン酸化プロテオーム解析により、光屈性誘導に働くフォトトロピン及びPP2Cによってリン酸化調節タンパク質を多数リストアップした。興味深いことにPP2C自身がphot によりリン酸化調節を受ける可能性が示唆された。根の光屈性はオーキシンに依存しないことが明らかになったが、根の光屈性が異常になった突然変異体の選抜はこれまで十分に行われておらず、新奇突然変異体の単離が可能である可能性があった。そこで根の光屈性異常突然変異体の選抜を行い、複数の候補株を選抜した。2020年度、これらの候補株の全ゲノム情報を取得し、多くの候補株の原因遺伝子が既存の光屈性関連遺伝子だったものの、1株(#27)は新規突然変異体候補株として残った。戻し交配等を進め、原因遺伝子特定のためのマッピング作業を準備中である。
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