研究課題/領域番号 |
18K19331
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
栗原 大輔 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 招へい教員 (90609439)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 植物 / 雌性配偶体 / 細胞個性 / 位置情報 / 顕微操作 / イメージング |
研究実績の概要 |
本研究では、細胞数が少なく単純な雌性配偶体形成過程をモデルとして、植物の細胞個性制御機構の解明に迫るために、核動態を直接制御することにより、核の位置情報と細胞個性決定の関係性の解明を目指した。 光顕微操作による核動態制御として、光ピンセットにより直接雌性配偶体内の核を移動できないか試みた。タバコ培養細胞における予備実験では、細胞内の粒子状オルガネラや細胞質糸の制御には成功していた。しかしながら、シロイヌナズナの胚珠を用いて8核期の核を補足しようと試みたところ、光ピンセットで補足することはできなかった。シロイヌナズナでは雌性配偶体が胚珠の中に埋め込まれているため、光ピンセットを用いた核の移動制御が困難であったことも考えられたので、雌性配偶体が胚珠から裸出しているため光顕微操作が容易なトレニアを用いて、同様に核の補足を試みたが、こちらもシロイヌナズナ同様、補足することはできなかった。この要因として、タバコ培養細胞で動かせていた粒子状オルガネラや細胞質糸に比べ核が大きく、光ピンセットでは植物細胞内で核を動かすための力が足りないことが考えられた。そのため、別の顕微操作として、光ピンセットではなく、磁気ピンセットにより核を移動させることはできないかと考え、実験系のセットアップ・植物材料の準備を進めた。また、多核体である4核期において、各位置と遺伝子発現に特徴があるのか、遺伝子発現解析を行うために、光変換蛍光タンパク質mEos4をヒストンH2Bに融合させ、顕微鏡下で解析したい核だけUVを照射し、緑色から赤色に蛍光を変換させた後、核を回収できるよう、実験材料の準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の計画では、光ピンセットにより核動態を直接制御することを目標にしていたが、植物細胞において、光ピンセットを用いて直接制御を達成することは適わなかった。そのため、実験手法を切り替え、磁気ピンセットによる制御を行うために、磁気ピンセット装置のセットアップを完了した。また、磁気ビーズを核に集積できるよう、磁気ビーズに標識したタグを結合できる標識核タンパク質を発現する形質転換植物体を作出を行った。また、遺伝子発現解析のための光変換蛍光タンパク質発現植物体の作出も完了した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、磁気ピンセットに注力し、核動態の直接制御を試みる。シロイヌナズナに加えて、タバコ培養細胞も用い、植物細胞で制御できる実験系の確立を目指す。また、雌性配偶体の多核体時期の核で遺伝子発現解析を行い、位置情報と細胞個性の関係性を明らかにすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費として計上していた消耗品費に残額が生じたため、次年度、引き続き消耗品費として使用する。
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