研究課題/領域番号 |
18K19333
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
東山 哲也 名古屋大学, 理学研究科(WPI), 教授 (00313205)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 植物ステロイドホルモン / ブラシノステロイド / 花粉 / 植物生殖 / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
<ブラシノステロイド(BR)の生殖能獲得に対する促進効果の解析> シロイヌナズナでの予備実験で観察された、培地上で発芽した花粉管に対する生殖能獲得促進効果について、トレニアでも見られるか調べる条件を検討した。培地上で安定してトレニアの花粉管を発芽させ胚珠と共培養する実験系ならびに技術の確立を進めた。また、シロイヌナズナを用いて、雌しべ組織とBRの関係について解析した。BRは雌しべ組織と、花粉管に対して、それぞれ効果を持つことを明らかにした。 <花粉への作用メカニズムの解析> 花粉においてBRのシグナリングがどのように働いているか調べた。培地上で発芽した野生型花粉管に対してBRを与えた場合は、与えない場合に比べて700以上の遺伝子が発現上昇し、雌しべを通過した花粉管の発現プロファイルに近づくことが明らかとなった。 <新規受容体探索への挑戦> 雌しべおよび花粉管において、BRシグナリングがどのように働いているか解析した。花粉管では、BRの受容体BRI1、BRLs、BAK1をはじめとした、シグナリング経路の遺伝子群は、ほとんど発現していなかった。bri1変異体については、少なくとも形成された花粉管は問題なく伸長、誘引されるようであるので、BR感受性についてさらなる解析を進める。また、有機化学合成による解析で、BRI1のアンタゴニストとされる分子にも促進活性があり、構造活性相関を明らかにした。この知見を基盤に、受容体の同定を進める。なお、有機合成化学の成果から、新規の花粉管機能の制御分子群として、特許を出願した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
有機合成化学に関する共同研究が想定以上に進展し、ブラシノステロイド受容体BRI1のアゴニストおよびアンタゴニストとされる分子をもとに、構造活性相関解析を進めた。これにより、BRI1に対するアンタゴニストとされる分子やその誘導体群にも促進活性があることが明らかとなり、新規受容体同定に向けた端緒が得られた。さらに、特許の出願も完了し、自由に研究活動も進められる状態となった。初めの論文について投稿の目途もたったため、当初の計画以上に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
<ブラシノステロイド(BR)の生殖能獲得に対する促進効果の解析> トレニアでは培地上で受精を引き起こすために花粉管が花柱を通過することは必須であり、花粉管の花柱依存性はシロイヌナズナよりも高い。トレニアにおいてもBRが生殖能獲得に対する促進効果が見られるか、これまでに確立しつつある実験系を用いて解析を進める。普遍性について議論する。 <花粉への作用メカニズムの解析> 花粉においてBRのシグナリングがどのように働いているか調べる。特にBRI1シグナリング経路の関与について明らかにする。BRI1が欠損してもBRの生殖能獲得促進が見られるか、BRI1下流のシグナリング経路の活性化が生殖能獲得に関係しないか、明らかにする。また、BRの花粉(管)での細胞膜透過性について調べるために、蛍光分子をつけた誘導体の作製についても検討する。 <新規受容体探索への挑戦> 花粉管誘引に対する促進効果見られる新規分子について、BRと同じ標的遺伝子群が発現変動するか確認する。誘導体を用いた、相互作用分子の直接的な同定に向けた条件検討を進める。また、ステロイドホルモンであることに着目し、候補と考えられる分子がないか検討し、逆遺伝学的なアプローチについても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究により想定を超えてブラシノステロイドの重要性や、花粉特異的な経路を制御する化合物が見いだされたため、特許の出願を優先し、秘密保持状態で研究活動を進めた。計画通りに特許出願を達成し、論文発表に向けた研究活動や共同研究の加速などが次年度に予想されたことからも、次年度使用額が増えるよう計画・実行した。
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