本研究は、植物は既知の自然免疫以外の免疫システムを持つのではないかとの仮説に基づいている。現在までに、モデル植物であるシロイヌナズナは、雨の機械刺激を認識して免疫を活性化することを明らかにしている。雨は多様な病原体を含むため、植物が雨を感知することで危機に備えるシステムは、非常に合理的であると言える。しかし、本現象はシロイヌナズナのみで確認された事象であったため、本研究では様々な植物種を用いて機械刺激応答性の免疫について調査した。 トマト、キュウリ、アサガオ、バジル、百日草、オクラ、綿花、エンドウ、そしてルーピンの葉に対して、ブラシによる機械刺激を負荷し、15分後の葉をRNA-seq解析に供試した。その結果、シロイヌナズナで同定された代表的な機械刺激応答性遺伝子のホモログの多くは、これら植物で発現されることが明らかになった。また、疾病防御応答に関わる遺伝子群も有意に含まれていることが示された。 さらに、同植物に対してブラシ刺激を行い、5分後の葉を用いてMAP Kinaseの活性化の有無について調査した。その結果、いずれの植物においてもMAPKのホモログと考えられるシグナルが検出された。 以上の結果から、機械刺激応答性の免疫が多くの植物種に保存されていることが示唆された。
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